日本代表はオースリアに到着したが…
5月31日にロシアワールドカップ本大会に挑むメンバー23人が正式決定し、6月2日に再集合してヨーロッパへ出発した日本代表。同日夕方にドイツ・ミュンヘン空港に到着した後、バスで直前合宿地のオーストリア・ゼーフェルトへ2時間かけて移動し、19時に宿泊先のホテルに到着した。
同日の現地は日中は快晴だったが、夕方から強い雨が断続的に降るあいにくの天候。だが、西野朗監督を筆頭に、浅野拓磨(シュトゥットガルト)と井手口陽介(クルトゥラス・レオネサ)を含む選手25人が次々とバスから降りてきた時には幸運にも雨があがっていて、チロル地方の民族衣装を身にまとい、音楽を奏でる現地関係者の粋な出迎えを受けることができた。
だが、長旅の疲れなのか、2週間後に迫ったワールドカップ本番の戦い方のメドが思うように立たないせいなのか、選手たちの表情は非常に険しかった。笑顔を見せたのは、キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)ら数人だけ。気さくな性格の吉田麻也(サウサンプトン)や酒井高徳(ハンブルガーSV)もファンのサインには応じたものの、ニコリともせずに淡々とペンを走らせるだけだった。
到着から30分後の19時半。ジャージに着替えた彼らは再びホテルのエントランスに登場。いきなりバスで練習場へ直行し、またも土砂降りになった冷たい雨の中、ランニングをスタートさせたのだ。4分走を4セット行い、合間にストレッチなどを入れる合計30分程度の軽いトレーニングではあったが、西野監督は「(練習は)予定通りです。遅延がなかったので」と説明。ぬかるんだグランドが懸念されたが、「(ピッチ状態?)いいですよ」と環境に満足した様子をのぞかせた。
ランニングの最中には、本田圭佑(パチューカ)が武藤嘉紀(マインツ)と終始、笑顔で談笑。長友佑都(ガラタサライ)が大島僚太(川崎F)と会話し、原口元気(デュッセルドルフ)も年下の遠藤航(浦和)や中村航輔(柏)と積極的にコミュニケーションを取るなど、世代間の壁が徐々に取り払われている様子だ。
そんな中、長谷部はやや厳しい顔つきで走っていた。ここから短時間でどうやってチームをまとめていくかを考えあぐねていたのかもしれない。ただ、いずれにしてもワールドカップの初戦は2週間後にやってくる。ゼーフェルトでの直前合宿を実り多いものにしなければ、サプライズは起こせない。本格的なトレーニングが始まる3日以降は、キャプテンの統率力とリーダーシップに期待したい。
(取材・文:元川悦子【ゼーフェルト】)
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