フロント主導の補強がことごとく失敗
チェルシーの失敗は、2017年夏に始まっていた──。
チャンピオンズリーグ(以下CL)との両立を図るべく、アントニオ・コンテ監督は超一線級の補強を上層部にリクエストしていた。ほぼ固定したメンバーで戦略・戦術を週ごとに確認、徹底していた16/17シーズンと異なり、CLとプレミアリーグを闘い抜くためには頻繁なローテーションが可能となる、豊富な選手層が必要とされるからだ。
ところが、メインターゲットと伝えられていたロメル・ルカクは、〈エージェントP〉ことポール・ポグバの介入によって、エバートンからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。レオナルド・ボヌッチやアレックス・サンドロ、フィルジル・ファンダイクとの交渉もまったく進まず、その間にネマニャ・マティッチがユナイテッドに新天地を求める予想外の動きも……。
代わってダニー・ドリンクウォーター、アントニオ・リュディガー。ダビデ・ザッパコスタ、アルバロ・モラタがやって来たとはいえ、コンテの優先順位としては決して高くない。夏の市場で指揮官のリクエストが唯一叶ったティエムエ・バカヨコも、ほとんど戦力にならなかった。
また、ジエゴ・コスタやダビド・ルイスなど、みずからと意見を異にする選手へのアプローチが高圧的で、コンテの管理能力に大きな疑問符が付きはじめる。
まるで、15/16シーズンの再現だ。フロント主導の補強がことごとく失敗に終わり、監督(当時はジョゼ・モウリーニョ)が正しいモチベーションを与えられず、選手たちは覇気をなくす……2シーズン前も同じ形で空中分解したにもかかわらず、チェルシーは過ちを繰り返したのである。