焦り以上に自信があった
ピッチの上でどのようなパフォーマンスを見せているか。サッカー選手の価値は、試合での活躍よって決まる。その点で、浅野拓磨は真価を発揮できているとは言い難い。自分を表現する機会すらなかった。
昨年12月16日のバイエルン戦では8分間、ピッチに立った。しかし、ウィンターブレイクが終わってブンデスリーガが再開すると、浅野は全く試合に絡めなくなった。ベンチ入りもままならない。結局、2018年に入ってからは1分たりとも出場機会を得られずにシーズンを終えた。
ロシアワールドカップアジア最終予選・オーストラリア戦では貴重な先制点を挙げ、本大会への出場権獲得に大きく貢献した。だが、シュトゥットガルトで出番を失うと代表での存在感も薄れていく。すると3月のヨーロッパ遠征でヴァイッド・ハリルホジッチ前監督は、浅野を招集外とした。アピールしようにもその場がない。日本代表を外れたのは致し方ないことだった。
それでも、暗澹たる気持ちを抱いたまま燻っていたわけではない。
「試合に出られないということで、日本代表に対してアピールができなかった。そういう意味で焦りだったりは正直なところありました。でも、それを考えても仕方がないので。目の前のことに対して全力でやり続けることができていましたし、それがあったからこそ、変なことを考えずに常にコツコツやってこられたかなとは思います」
試合に出場できないとはいえ、サッカーを取り上げられたわけではない。不安な気持ちを打ち消すために、浅野は自らと向き合った。自信だけは決して失わないように、少しでも成長できるように、歩みを止めることはしなかった。