元祖フェノーメノ、ロナウドを彷彿とさせる
「ムリエルはフェノーメノ(怪物)だ。ただこれは、自分が今まで指導してきた選手の中で一番強力だという意味ではない。もっとも潜在能力のある選手ということだ。クアドラードは素晴らしかった。だが、本当の怪物は彼だと思う」
2011-12シーズン、ルイス・ムリエルはレッチェにいた。ウディネーゼに所属していた彼はファン・ギジェルモ・クアドラードとともにレンタル移籍をし、セルセ・コズミ監督の薫陶を受けてリーグで頭角を現していた。
冒頭のセリフはコズミによるムリエルの評価である。のちにフィオレンティーナやチェルシー、ユベントスへステップアップを図るクアドラードよりも、その潜在能力は高く評価されていた。
確かにそのプレイぶりは、当時からスケールの大きさを感じさせるものだった。なにせ、イタリア人がかつて目撃した『フェノーメノ』と良く似ていたのだ。インテルやミランでプレイをした、ロナウドのことだ。
強靭なダッシュで一気にトップスピードに乗りながら、軽やかなボールタッチで自由自在に緩急をつけるドリブル突破には、誰もがブラジル代表の名ストライカーの姿を重ねた。
イタリア国内のビッグクラブのみならず、海外のメガクラブからの興味も引いたムリエル。もっともその後のキャリアは順風満帆とはいえず、潜在能力を発揮できずにいたのだが、この1、2年で急成長。攻撃陣にタレントが揃うコロンビア代表にもコンスタントに招集され、3月のフランス戦ではゴールを挙げた。
高い才能には誰もが疑いの余地を挟まなかった高速のストライカーは、ロシアW杯で飛躍する準備を整えている。