青山敏弘(中央)の招集は3バック導入を示唆するのか。本田圭佑(左)と香川真司(右)が2シャドーで共演も…【写真:Getty Images】
日本サッカー協会は18日、今月30日に行われるガーナ代表との国際親善試合に向けた日本代表メンバーを発表した。
ロシアワールドカップにつながる27人のメンバーの中で、サプライズ招集となったのはMF青山敏弘だった。チームの大黒柱として現在J1の首位を走るサンフレッチェ広島をけん引する32歳は、約3年ぶりの日本代表復帰となった。
西野朗監督は「彼は過去にも代表に選ばれていますし、そこでの貢献度も高く評価しています。過去の実績と経験値、プラスして現状のトップパフォーマンスというところを評価しました。できることなら、最終的にそういう力を代表チームにも」と、青山を高く評価していた。
あくまで「間違いなくいま最高のパフォーマンスをしている選手の1人」という状態での選出だが、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の指揮下でプレーしていた選手をメインにチームを構成する意向を示していただけに、青山の招集は文字通りの「サプライズ」だった。
そこで浮上するのが、「広島式3バック」という新たなオプションの採用である。西野監督は自らの就任会見で「構築してきた技術力を最大限に生かし、組織的なところで結束して戦う」と語り、「日本化した日本のフットボール」という表現で、カウンター重視だった前体制とは全く方向性の違うパスサッカーの導入を示唆していた。
近年、日本国内のJリーグにおいて最も成功したと言えるのが、広島が採用していた3バックによるポゼッションサッカーで、彼らは2012年、2013年、2015年と短期間で3度のリーグ優勝を成し遂げた。そして、当時広島を率いていた森保一監督は、コーチとして日本代表に入閣している。
同じように当時の広島を知る下田崇GKコーチも、西野監督就任とともに日本代表のスタッフとしてワールドカップに帯同することとなった。
森保コーチや青山だけでなく、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現北海道コンサドーレ札幌監督)時代から脈々と続いてきた広島の3バックをよく知り、対応できる選手も日本代表にはいる。かつて広島でプレーしたDF槙野智章(現浦和)やFW浅野拓磨(現シュトゥットガルト)は、ペトロヴィッチ監督が植えつけ、森保監督が発展させた3バック(3-4-2-1)での戦い方を熟知しているはずだ。
また、西野監督は18日の日本代表メンバー発表会見の中で「固執したシステムやポジションだけではない。ポリバレントな能力を持った選手たちがこのリストの中にいる。そういう戦い方、戦術的な柔軟性も出してほしい」と述べ、「ポリバレント」という単語を何度も強調した。
「(FWで登録された4人は)前線をやれる選手ではあるとが、彼らは前線だけでなく、シャドーのMF的なポジションに入る可能性もありますし、サイドのラテラル(ウィングバックや攻撃的サイドバックの意味)になる可能性もある。MFの選手でも、2トップ、3トップ、1トップと(システムが変われば)ポジションも変わってくる」
こう話したように、西野監督は短期間で過酷な試合を多くこなしていくワールドカップに向け、日本代表選手たちに1人で複数のポジションをこなせることを求めている。それはストライカーがサイドでプレーできる、ウィンガーがセカンドトップ的に振る舞える、中盤で攻撃的にも守備的にも動ける、サイドバックとウィングバックに対応できる、センターバックでありながら4バックでも3バックでも柔軟にこなせる、といった細かな「ポリバレントさ」も含まれるだろう。
となれば浦和レッズで3バックの右ストッパーを務めているDF遠藤航などは問題なく3バックに対応でき、MF登録の長谷部誠もフランクフルトでやっているような3バックの中央でプレーできる。トップ下が本職のMF香川真司やMF本田圭佑が、よりゴールに近づく2シャドー(セカンドトップ)で起用されることも考えられる。両サイドバックがウィングバックとして振る舞うのも可能だろう。
コロンビア、セネガル、ポーランドと強豪揃いのグループを突破するために“プランB”となるオプションを作り出すことは不可欠。果たして日本代表での「広島式3バック」は実現するだろうか。導入に必要な要素は揃っているように見えるが…。
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