セルビアリーグからやってきた2人の外国人FW
前半45分間だけで3-4というスコアは、輝きを放つ2人の外国人FWの熱くたぎらせた闘志がピッチ全体に伝播した結果だったのだろうか。
先週末21日に行われた明治安田生命J1リーグ第9節の横浜F・マリノス対湘南ベルマーレは4-4のドローに終わったが、先述の通り前半だけで7ゴールが生まれる乱打戦となった。
主役となったのは両チームの外国人FWである。
横浜FMのポルトガル人FWウーゴ・ヴィエイラは前半だけでハットトリックを達成した。湘南のセルビア人FWアレン・ステバノヴィッチは、一度自らのゴールとアナウンスされた8分の先制点がオウンゴールに訂正されてしまう不運こそあったものの、前半終了までにさらに2つのゴールを決めた。
今季のリーグ戦7得点目を奪ったウーゴ・ヴィエイラはJ1の得点ランキングトップに立ち、ステバノヴィッチは今季2度目のリーグ戦先発出場でJ1初ゴールを含む2得点と移籍後最高のパフォーマンスを披露したのである。
実はこの2人には、来日前から切っても切れない因縁がある。それぞれの前所属クラブがライバル同士で、在籍時期も1年半ほど被っていたのだ。ウーゴ・ヴィエイラはレッドスター・ベオグラード(セルビア語では「ツルヴェナ・ズヴェズダ」)から昨季日本へ移籍し、ステバノヴィッチは同じ街に本拠地を置くパルチザン・ベオグラードから今季Jリーグにやってきた。
この2つのクラブによる試合は「ベオグラード・ダービー」や「エターナル・ダービー(永遠のダービー)」と呼ばれる。セルビアの首都ベオグラードで繰り広げられるダービーマッチでは、熱狂的なサポーター同士の衝突が頻繁に起き、毎回のように負傷者や逮捕者が出ることで有名だ。
これほどの壮絶なビッグマッチを複数回経験したからか。ウーゴ・ヴィエイラとステバノヴィッチはお互いのことを「覚えていた」と口を揃えた。日本でも、レッドスターとパルチザンの因縁は続いていたのである。
長いキャリアの中でわずか数試合対戦しただけの相手選手を記憶している。そのようなことは珍しいのではないだろうか。