独2部移籍で復調。1年ぶりに日本代表でプレーしたが…
「ゼロの状態からロシアへの可能性を少し広げることはできた」と3月27日のウクライナ戦(リエージュ)の後、前向きに語った宇佐美貴史(デュッセルドルフ)。昨年3月のロシアワールドカップアジア最終予選・タイ戦(埼玉)以来、1年ぶりに日本代表に復帰し、マリ戦とウクライナ戦に続けて出場したことは、本人も語る通り、ロシアへ一歩前進と言ったところだろう。
しかしながら、チャンスを与えられた2試合でゴールに直結する仕事ができなかったのも事実。「結果も出せてないですし、得点を作り出すシーンもなかったし、正直、アピールできたとは全く思ってないです」と自らに厳しい評価も下している。同じポジションでジョーカーとして起用された中島翔哉(ポルティモネンセ)がマリ戦の劇的同点弾などでインパクトを残したのだから、焦燥感はひと際強いはずだ。
宇佐美がロシアへ行くために残された道は、所属するブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフでピッチに立ち続け、ゴールやアシストなど明確な結果を積み上げること。それはヴァイッド・ハリルホジッチ監督の電撃解任という現実を突きつけられた今も変わらない。
出場機会増の重要性を本人も強く認識しているからこそ、今季開幕直前の昨年8月末にブンデスリーガ1部のアウクスブルクからレンタルで2部へ赴く決断をした。バイエルン・ミュンヘン、ホッフェンハイム、アウクスブルクと複数の1部クラブでのプレーを経験した宇佐美にとって、カテゴリーの下がるリーグでのプレーは初めて。
それでも「ロシアへ行くために出場機会を得ないといけない。そういう気持ちも移籍の背景にありました。頭の上をボールが超えていくサッカーだったアウクスブルクよりも、今はやりたいサッカーに近い。自分のよさを出しやすい環境にあると思う」とポジティブに捉え、積極果敢なチャレンジに打って出た。
だが、今季のデュッセルドルフは開幕から絶好調で上位をキープしていたこともあり、かつて高原直泰(沖縄SV)をフランクフルト時代に指導したフリームヘルト・フンケル監督も既存のチームをすぐに変えようとはしなかった。前半戦の宇佐美はベンチスタートが多く、ゴールも加入直後の9月10日のウニオン・ベルリン戦と9月23日のザンクトパウリ戦での2つのみ。
「チームが好調な分、監督もメンバーを固めて戦うことが多くて、僕は先発で出られない状態が続いているけど、少しずつ段階を踏んで前進しているのかなと思います」と苦境の続いた昨年10月、彼は冷静に自身を客観視していた。