「お互いに成長して、この舞台に立てた」(杉岡)
運命に導かれた縁を、相手の先発メンバーを知った瞬間に感じずにはいられなかった。初めて経験するJ1の舞台で、開幕戦から4試合続けて左アウトサイドで先発した湘南ベルマーレの19歳、杉岡大暉は眠っていた記憶を慌てて蘇らせた。
敵地・味の素スタジアムに乗り込んだ18日の明治安田生命J1リーグ第4節。FC東京の最終ラインのなかに、J1デビュー戦となる19歳の岡崎慎の名前を見つけたときだった。他のメンバーの顔触れからして間違いなく右サイドバックに、つまり自らの対面に配置される。
くしくも両チームの「29番」を背負った2人は、2011年から3年間所属したFC東京U-15深川で切磋琢磨し合った元チームメイト同士であり、別々の道を歩んでいった卒団以降もお互いを意識し合ってきた親友同士でもあった。
「お互いに成長して、この(J1の)舞台に立てたのはよかったですね」
笑顔でこう振り返った杉岡は、対人守備に秀でた左利きのボランチとしてFC東京U-15深川の主軸を担いながら、FC東京U-18への昇格を逃した。ポジションも利き足もサイズも同じで、現在はFC東京のトップチームに所属している鈴木喜丈が、フロントから将来を嘱望されたためだった。
捲土重来を期して入学した千葉県の強豪・市立船橋高校で杉岡はセンターバックへの転向を命じられる。左利きのセンターバックは日本サッカー界でも希少価値があることと、自身の左足には精度の高いキックが宿っていることを、同校の朝岡隆蔵監督から告げられた。
高校No.1のセンターバックという評価を得るまでに成長した最終学年になると、4つのJクラブから正式なオファーが届いた。ベルマーレと名古屋グランパス、ジェフユナイテッド市原・千葉、そして一度は道を閉ざされたはずのFC東京だった。2016年の夏のことだった。
おりしもFC東京は、J3にU-23チームを参戦させていた。すぐにはトップチームで公式戦の舞台に立てなくても、J3でプロの戦いを経験できるかもしれない。それでも杉岡は練習参加したときに憧憬の念を抱いた、ベルマーレへ入団することを決めた。