プロ入り前に突如襲った悲劇
アンジェ・ポステコグルー新監督の下でスタートを切った横浜F・マリノスの2018年。始動からグラウンドでひときわギラギラした雰囲気を漂わせる男がいた。プロ4年目のシーズンを迎える仲川輝人である。
昨季後半戦はJ2のアビスパ福岡に期限付き移籍していた25歳は、人一倍強い決意を胸に新シーズンのスタートを迎えていた。
一般的に大卒選手に与えられている時間は、高卒選手のそれよりも短い。最も大きな理由は年齢だろう。高卒選手が18歳でプロ入りできるのに対し、大卒選手は22歳でプロの世界に足を踏み入れる。その段階で4年のビハインドがあり、大卒選手にはプロ1年目からより即戦力としての貢献が求められる。
2011年から2014年に関東大学リーグ1部で4連覇を成し遂げた専修大学の中心選手で、3年次の2013年には同リーグ得点王も獲得した仲川。同じ年には上級生の天野純(順天堂大→現横浜FM)や長澤和輝(専修大→現浦和)、谷口彰悟(筑波大→現川崎F)、赤崎秀平(筑波大→現川崎F)、下田北斗(専修大→現川崎F)らとともにユニバーシアード競技大会にも出場した。
大卒としてプロ入りする以上、すぐに結果を求められる。とはいえ大学サッカー界屈指の実力と実績を兼ね備え、当時の「大卒No.1ルーキー」として高い評価を得ていた仲川にはJリーグでの順風満帆なキャリアが待っていると思われた。
そんな彼を取り巻く状況が一瞬で変わってしまう事件が起こったのは2014年10月19日のことだった。関東大学リーグ1部も終盤に差し掛かった第18節の駒澤大学戦、専修大学が5-3でリードして迎えた終盤、自陣ゴール前に戻って決死のカバーを試みた仲川に相手選手が突っ込んで右ひざを負傷してしまった。
診断結果は右の前十字じん帯と内側側副じん帯断裂、右ひざ半月板損傷という大けがだった。