初見の印象は芳しくなかったが…
個人的な印象で恐縮だが、ハリー・ケインの初見は芳しくなかった。トップチームでのデビューとなったハート・オブ・ミドロシアン戦(ヨーロッパリーグ/2011年8月)をチェックしたノートには、「これといった特徴がない」と記されている。
当時のトッテナム・ホットスパーは毎シーズンのように監督が代わる混乱に陥り、ハーツ戦の采配も戦略・戦術には無頓着のハリー・レドナップだったため、まだ17歳のケインは右も左も分からずにプレーしていたのかもしれない。
しかし、『テレグラフ』や『ガーディアン』、さらに『BBC』といった大手報道機関は、こぞって好感的だった。
「フットボールと向き合う姿勢が素晴らしい。アルコールと派手な生活を好まず、レベル向上のための努力を惜しまない」
古くはジョージ・ベスト、近年ではウェイン・ルーニー、ジャック・ウィルシャー、アンディ・キャロルなど、酒と淫らな女性関係でせっかくの才能を食い潰してきた者も少なくはないが、ケインは誘惑だらけのロンドンで生まれ育ちながら、日々精進してきた。いや、いまも精進しており、この真摯な姿勢が昨今の大ブレイクにつながった、といって差し支えないだろう。
2012-13シーズン、開幕節のニューカッスル・ユナイテッド戦でプレミアリーグにデビューしたものの、当時のスパーズはガレス・ベイルが絶対的なエースであり、前線の軸はジャーメイン・デフォーだった。
ケインは首脳陣にアピールする機会さえ与えられず、ノリッジ・シティへのローン移籍を余儀なくされている。また、スパーズに復帰した13-14シーズンは待望の初ゴールを含め3得点を決めたが、エマヌエル・アデバヨール、ロベルト・ソルダードの刺激剤にもならなかった。