オーストラリア代表GKミッチェル・ランゲラックが名古屋グランパスに加入【写真:Getty Images】
失点を減らし、より多くのゴールを奪うこと。J2からJ1に復帰した2018年、再びトップリーグへの定着を目指す名古屋グランパスが展開した補強の方針はシンプルだった。
その中で、昨季J2で65失点だった守備陣を立て直すべく招かれたのがオーストラリア代表GKミッチェル・ランゲラック(登録名:ランゲラック)である。スペイン1部のレバンテで出場機会を得られていなかった「アジア枠」の守護神は、名古屋で元日本代表GK楢崎正剛らとの競争に挑む。
今年8月に30歳になるランゲラックだが、キャリアの大半を第2GKとして過ごしてきた。母国オーストラリアのメルボルン・ビクトリーで台頭し、セレッソ大阪から移籍した香川真司と同時期にドイツの名門ボルシア・ドルトムントに引き抜かれるも、ドイツ代表の名手ロマン・ヴァイデンフェラーの牙城を崩せず。
その後に加入したスイス代表のロマン・ビュルキとの競争にも敗れ、シュトゥットガルトへと新天地を求めた。そして在籍2年目の昨季、ついに定位置を掴み取り、正守護神として日本代表FW浅野拓磨らとともにシュトゥットガルトの1部昇格に大きく貢献した。
だが、今季(2017/18シーズン)は7月にレスター・シティから加入したドイツ代表GKロン=ロベルト・ツィーラーとの競争に勝てず、夏の移籍市場閉幕間際にさらなる出場機会を求めてスペインのレバンテへと移籍した。結局はラウール・フェルナンデスとオーイエル・オラサバルの後塵を拝して3番手に甘んじていたため、オーストラリア代表としてのロシアW杯出場なども見据えて名古屋移籍に至ったという経緯がある。
それでもドルトムントやシュトゥットガルトなどで信頼を得てきた、確かな実力を備えている。ランゲラックの最大の武器は、至近距離からのシュートに対する反応、とりわけ腰の高さよりも低いボールの処理の正確さである。
足もとに入ってくるシュートに対し、自分の足を「刈って」体を地面に落として腕を伸ばすセービング。相手FWとの1対1の状況でも常に体を大きく広げて「面」を作り、正対したポジショニングから最後の一瞬まで相手の動きを見極めたうえで体をボールに向けていくセービング。そういった瞬時に反応して正確に体を動かさなければならない難しいプレーを、身長193cmの大柄な体で非常にスムーズにこなす。
また欧州トップレベルでの強烈なミドルシュートに対しても、ランゲラックはその体格と手足の長さを生かしてゴール全体を万遍なくカバーできる。ボールをキャッチしてからのスローイングや、キックでのビルドアップも迅速かつ正確だ。
クロスセービングに対して若干のぎこちなさを見せる場面もあるが、穴という穴がほとんどない欧州基準でバランスのとれた能力の持ち主だと言える。チャンピオンズリーグでの出場や、バイエルン・ミュンヘンなどの世界屈指の強豪クラブと対戦した貴重な経験も持つ。
ランゲラックは風間八宏監督が目指すサッカーの根幹を支える絶対守護神になりえる能力とポテンシャル、そしてモチベーションを秘めている。名古屋で名手・楢崎から定位置を奪っても驚きはない。
(文:編集部/データ提供:Wyscout)
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