ジュニアサッカーを応援しよう!『いわきFCの果てなき夢』連載ページ
異彩を放つ挑戦の出発点
お互いに2ゴールずつを奪い合い、突入した延長戦で立て続けに3ゴールを叩き込んで力でねじ伏せる。2017年6月21日。舞台は天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦。雨が降り続けた幌厚別公園陸上競技場で演じられたジャイアントキリングは、日本サッカー界に衝撃を与えた。
まさかの敗退、それも完敗に打ちひしがれたのはJ1の北海道コンサドーレ札幌。対照的に勝者の咆哮を敵地の夜空にとどろかせたのは、J1から数えて7部に相当する福島県社会人リーグ1部に所属するいわきFC。無名のアマチュア軍団の存在が、一気に全国へ知れ渡った瞬間だった。
再びJ1勢に挑んだ7月12日の3回戦では清水エスパルスに0‐2で苦杯をなめ、決勝でJ3の福島ユナイテッドFCを撃破した福島県予選から紡がれてきた、痛快無比な快進撃はストップした。それでも攻守両面で激しく、勇敢に戦い続けた90分間に対して、敵地・IAIスタジアム日本平に居合わせたエスパルスのサポーターからスタンディングオベーションが送られた。
図らずもさらに知名度が上がる敗退となったが、当初はいわきFCとは別のチーム名称が検討された時期もあった。湘南ベルマーレの代表取締役社長を辞して、2015年12月にいわきFCを運営する株式会社いわきスポーツクラブの代表取締役に就任した大倉智が振り返る。
「最初は『福島FC』とか、いろいろな考えがありました。運営会社の名称も『株式会社福島』にしようとか。かなりの議論を積み重ねてきた結果として、やっぱり『いわき』でいこうと」
アメリカのスポーツ用品メーカー、アンダーアーマーの日本総代理店を1998年から務める株式会社ドーム(本社・東京都江東区)が、東日本大震災からの復興を支援する拠点としてきたいわき市に、サッカークラブを立ち上げることを決めたのが異彩を放つ挑戦の出発点となった。