日本代表FW大迫勇也は鹿児島城西高時代に10得点10アシストを挙げて高校選手権の最多得点記録を作った【写真:Getty Images】
第96回全国高校サッカー選手権の1回戦が31日に行われ、長崎県代表の長崎総科大附属は愛知県代表の中京大中京に3-0で勝利し2回戦進出を決めた。
今大会の注目選手にも挙げられる長崎総附のFW安藤瑞季は、後半終了間際にダメ押しのチーム3点目を奪った。試合後「最後は(荒木)駿太とチームメイトに救われた。自分もチームに貢献しようとずっと走っていましたし、最後はそれが実ったかなという感じ」と安堵の表情を浮かべた。
卒業後はセレッソ大阪加入が内定している安藤は、U-20日本代表候補にも選ばれており、高校No.1ストライカーと高い評価を得ている。それだけに目標は高く「大迫勇也さんの10得点を、(越えるために)あと10得点足りないので、長ければあと5試合、そこに向かってチーム一丸となって頑張りたい」と意気込む。
大迫は鹿児島城西高時代の2009年、準優勝に終わった第87回大会で10得点10アシストを記録して選手権の歴代最多得点記録を樹立していた。
安藤はひとまず中京大中京戦で1得点目を挙げて順調なスタートを切った。「決めてもあと10得点あるからクールにいこうと思っていたんですけど、正直嬉しくて、本当に感謝しかしていないです」と安藤。ボールを持てば積極的に仕掛ける姿からエゴイスティックなスタイルも想像できるが、決してそうではない。
「やっぱり目の前が大迫さんになると見えなくなってくるものもあると思う。自分は本当にチームに貢献するという点で、チームのために走るし、体も張るし、それで本当にゴールがついてきたら自分は嬉しいし、楽しいと思う。そうやってチームプレーで勝っていくのが自分たちだと思う。そこはブレずにやりたいです」
高卒でのプロ入りを意識するようになったのは高校生になってから。長崎総附のキャプテンだった3歳上の兄・翼(現駒沢大)は3年前の選手権の1回戦で中京大中京に敗れていた。その後プロではなく大学を選んで後悔した兄に「お前は絶対にプロに行け」と言われてきたという安藤は、小嶺忠敏監督が勧めた大学進学ではなく、Jリーグ行きを3年間意識し続け、C大阪加入を決めている。
「周りと勝負するというよりは、自分と戦って自分の力をどんどん上げて、成長していくのが自分には合っているかなと思っています。周りと比べるという感じではなくて、自分に勝つ、自分を越えたいという気持ちが強いです」
チームプレーに徹しながら自らの結果を追い求め、全国制覇を目指す安藤。大迫だけでなく、同じく小嶺監督の教え子でもある大久保嘉人も「越えたい」と力強く語る高校No.1ストライカーの視線は、選手権で優勝することと、その先も見据えていた。高校日本一はそのための第一歩になるかもしれない。
「自分は追いつきたいとか、その選手になりたいとかじゃないんですよ。自分のスタイルでそれ(大迫や大久保)を越えたいと思っていて。本当に追いつきたいとか、憧れとかじゃなくて、追い越したい選手はたくさんいますね」
(取材・文:舩木渉)
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