新体制で委ねられた「決定権」
きっかけを掴んだ。12月12日に行われたブンデスリーガ第16節。ペーター・シュテーガー新監督によって、守備が改めて整備されたボルシア・ドルトムントは、1.FSVマインツに勝利を収めた。ただの1勝ではない。DFBポカール2回戦を除けば、およそ2ヶ月半ぶりの白星である。長い苦境を抜け出すための足がかりを、ようやく得たのだ。
1.FCケルンを率いていた時代を引き合いに、シュテーガー氏は[4-3-3]を得意としていない、という私の見立ては誤っていた。2-0で完勝したマインツ戦では、ピーター・ボス前監督の後を継ぎ、[4-3-3]の布陣を採用。試合後にはボス氏を立てるコメントを残したシュテーガー監督は、「選手たちの能力に合わせて戦術を考えるのが監督の役目」と語った。
その「選手たちの能力」を尊重する姿勢は、マインツ戦の77分に見て取れる。70分にマハムート・ダフートが投入されたことで、左にポジションを移していた香川真司は、ベンチに駆け寄ってシュテーガー監督に“確認”した。
「ラファ(エル・ゲレイロ)がトップ下やってたんで、『ラファがトップ下でいいのか』って話をしたら、『それはお前が自由に変わっていい』、って。そうしたらもう即決ですよね。確実に俺がトップ下に行ったほうがいいですし、ラファも『ウイングのほうがいい』って言ってたんで。まぁラファもそうとう疲れてたんで、俺が左かなと思ったんですけど、そこは結構『決めていい』って言われたんで、じゃあもうトップ下のほうが上手くいくと思ったんで、そうしました」
その後、[4-4-1-1]の「トップ下に行った」香川は、89分に決勝点を決めている。シュテーガー監督が、背番号23にポジション変更の決定権を委ねたことで、2点目は生まれたとも言えるだろう。「そうとう疲れてた」ゲレイロがトップ下に居座っていたら、そもそもアンドリー・ヤルモレンコが競ったボールを、香川がピエール=エメリク・オーバメヤンにヘディングで送ることは出来なかっただろう。それから「即決」と強気の日本人MFは、ゴール前に走り込んで、オーバメヤンからのパスを押し込んでいる。