アーセナルのアーセン・ヴェンゲルは日本での経験を元に勝者らしい振る舞いとは何かを説いた【写真:Getty Images】
「私は日本にいたとき相撲を見に行ったことがあるのだが、相撲では(力士は)勝っても何も言えないんだ。対戦相手への敬意を欠くため、喜びは見せない」
こんなコメントを残したのは、かつて名古屋グランパスを率いた経験を持つアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督である。英紙『テレグラフ』など複数メディアが伝えている。
ヴェンゲル監督が日本の相撲を引き合いに出して語ったのは、現地時間10日に行われたマンチェスター・ダービーの試合後に起こったとされる騒動のことだった。
勝利したマンチェスター・シティの選手たちがアウェイのオールド・トラフォードのロッカールームで大騒ぎし、それに対し「敗者に対し敬意を欠いている」と抗議しにいったマンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョ監督らが関与した騒ぎのことだ。
モウリーニョ監督はシティのGKエデルソンと口論になり、他のスタッフや選手たちも加わって20名ほどが入り乱れる混乱が巻き起こったとされている。この最中でシティのコーチを務める元スペイン代表のミケル・アルテタ氏らが負傷し、モウリーニョ監督はペットボトルをぶつけられ、水やミルクをかけられたという。
結果的に騒動を収めるには警察やスタジアムの警備員が仲裁に入るしかなかったようだ。一連の出来事を伝え聞いたヴェンゲル監督は、自らの日本での経験を例に挙げ「相撲では15日間にわたって毎日取り組みがあり、最も多く勝利した者が優勝者となる。横綱になるには6つの場所のうち最低2場所で優勝する必要がある。とても面白いのは、横綱になるためには委員会が倫理的な判断をするということだ。もし場所で優勝したとしても、行動が優れていなければ横綱にはなれないんだよ」と、真の勝者がそれにふさわしい行動する必要性を説いた。
日本では横綱の倫理観や行動が問題視されている昨今だが、真の勝者とは何たるかを知り、シティやユナイテッドが「横綱」的に振る舞う必要があると誰よりも理解しているのが両クラブに無関係なアーセナルの監督というのも皮肉なところ。「勝者」らしい行動とは何かというのを考えさせれるエピソードとなった。
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