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Jリーグ 7年前

川崎Fの執念。失意のルヴァン杯決勝からの復活。奇跡への序章になることを信じて

川崎フロンターレが土壇場で踏みとどまった。負ければ鹿島アントラーズの連覇が決まる18日の明治安田生命J1リーグ第32節で、スコアこそ1‐0ながらシュート数では25対1とガンバ大阪を攻守両面で圧倒して、勝ち点差を4ポイントに縮めた。YBCルヴァンカップ決勝でセレッソ大阪に屈し、悲願の初タイトル獲得を逃してから2週間。失意のどん底に叩き落されたメンタルを蘇らせ、価値ある勝利を手にした3つの要因を、大黒柱のMF中村憲剛(37)の言葉から紐解いた。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

中村憲剛のひらめき。「目先を変えてみようかな」

川崎フロンターレのMF中村憲剛
川崎フロンターレのMF中村憲剛【写真:Getty Images】

 脳裏に閃くものがあった。前半から数えて10本目のコーナーキック。等々力陸上競技場のゴール裏を埋めたサポーターの祈りを背に受けながら、右のコーナーエリアにボールをセットする川崎フロンターレの大黒柱、MF中村憲剛は意を決した。

「ちょっと目先を変えてみようかな」

 それまで獲得した9本のうち、後半11分のショートコーナーを含めて、6本をニアサイドに集めていた。DF奈良竜樹が放った強烈なヘディングシュートが、ガンバ大阪の日本代表GK東口順昭に防がれた前半28分の2本目を除けば、すべてガンバの選手にクリアされていた。

 しかも、ガンバのニアサイドにはDF谷口彰悟をマンマークする183センチの日本代表DF三浦弦太、奈良をマンマークするDF今野泰幸だけでなく、後半途中からは192センチの長身FW長沢駿がスペースを埋めるようにそびえ立っていた。

 時計の針は後半37分にさしかかろうとしていた。スコアは両チームともに無得点。それでも、不思議と焦りはなかった。むしろ、コーナーキックに関しては“餌”をまき続けた、という感覚を抱いていたのかもしれない。中村が続ける。

「もちろんチームとしても狙いはありますし、どこに蹴るか、誰がどこに入るかというのはあるんですけど。ニアだったらはね返されて終わりですけど、ファーに蹴ったらヒガシ(東口)も届かないだろうし、まだ何かが起こるかもしれないので。その意味ではちょっと蹴ってみようかなと」

 三浦や今野、そして長沢を越えた高い弾道が弧を描きながら、狙いを変えたファーサイドに急降下してくる。中村からは特にサインは送られていない。それでも落下点ではMF家長昭博が、マーカーのDF藤春廣輝と激しくポジションを争いながら、ジャンプするタイミングをうかがっていた。

「中へ入っていく選手が、各々のポジションに入っていくだけなので。たまたま僕のところに来ただけです」

 こう振り返る家長が放ったヘディングシュートは藤春の体をかすめ、ゴールの枠を外れるかたちで左側へ転がっていく。そこへ走り込んできたのが、日本代表MF井手口陽介のマークを巧みに外し、フリーの状態になっていたDFエウシーニョだった。

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