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Jリーグ 7年前

大宮・石井正忠新監督が挑む「奇跡のJ1残留」。残り3試合で4ポイント差、火中の栗を拾う覚悟

リーグ戦が残り3試合の段階で、大宮アルディージャの監督に電撃就任した鹿島アントラーズ前監督の石井正忠氏(50)が7日、さいたま市内のクラブハウスで就任会見に臨んだ。古巣から託されたミッションは、現在17位のチームを逆転でJ1残留に導くこと。会見の途中で思わず目頭を熱くさせた新指揮官の脳裏に描かれていた、アントラーズを昨シーズンのJ1&天皇杯の二冠に導いた処方箋を、発売中の『フットボール批評issue18』で行ったロングインタビューから紐解いた。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie, Getty Images

監督就任会見で熱くさせた目頭

大宮アルディージャの新監督に就任した石井正忠氏
大宮アルディージャの新監督に就任した石井正忠氏【写真:藤江直人】

 言葉がおもむろに途切れた。一瞬の沈黙のあと、必死に紡ぎ出した声が震えているのが、マイクを介してはっきりと伝わってくる。大宮アルディージャの新監督に電撃的に就任した、鹿島アントラーズ前監督の石井正忠氏がひな壇の中央で目頭を熱くさせている。

 さいたま市内のクラブハウスで、7日午後に行われた就任会見。森正志代表取締役社長、新たに就任した西脇徹也強化本部長ともにスーツ姿で会見に臨んだ石井監督が、「この厳しい局面でオファーを引き受けた決定的な理由はあるのでしょうか」と質問された直後だった。

「どういう状況だとしても、監督就任のオファーを受けるのは嬉しいことです。クラブがこのような厳しい状況だからこそ、私にオファーをくれたということ。その強い意思を受けたので……」

 ここで言葉を詰まらせた。雰囲気的にも涙は似合わないとわかっていたからか。高ぶる思いを何とか抑えながら、オファーを受けてから2、3日で即答した理由を続けた。

「……それに応えないわけにはいかない気持ちもありました。本当に大変な仕事だとは思いますが、いままで選手、コーチ、監督として培ってきた私の経験を、短期間でもこのクラブに何か残すことができればという思いもあって引き受けました」

 オファーを受けた時点で、アルディージャはJ2降格圏の17位にあえいでいた。残されたリーグ戦は3試合で、J1残留となる15位のヴァンフォーレ甲府との勝ち点差は4ポイント。18日の次節でアルディージャが負け、ヴァンフォーレが勝てば、その時点でJ2への降格が決まる。

 ひとつの黒星も許されない状況はまさに崖っぷちであり、火中の栗を拾う選択をくだしたようにも映ったが、実はアルディージャとは前世紀から縁があった。石井監督が順天堂大学を卒業した1989年に加入したのが、アルディージャの前身だったNTT関東サッカー部だった。

 日本リーグ2部で2年間プレーしたあと、同じカテゴリーから唯一、1993年のJリーグ元年に臨む10チームへの参加が決まっていた住友金属工業蹴球団へ移籍。電撃的な現役復帰で世界中を驚かせた、神様ジーコらともに鹿島アントラーズの創設メンバーとなった。

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