大岩剛監督就任後、ボランチのファーストチョイスに
目指してきたゴールが、はっきりと輪郭をなして見えてきた。ヨーロッパ遠征に臨んでいる日本代表に最多となる5人を輩出し、全員が先発フル出場した浦和レッズをシュート3本に封じ込めた。
守備陣が体現し続けた粘り強さに応えるように、後半35分にMFレアンドロが虎の子の決勝弾をゲット。通算14度目となる完封勝利でJ1連覇へ王手をかけた鹿島アントラーズの心臓部で、先発メンバーでは最年少となる21歳のボランチ、三竿健斗は安堵の表情を浮かべていた。
「自分自身のプレーはあまりよくなかったけど、最終的にはチームが勝てたので。お客さんがたくさん入っていたなかで、すごく緊張感のある試合でした。サポーターの方々の応援もすごく感じるものがあったし、本当に心強かった。みんなが笑顔で帰れるように、と思っていたので」
言葉は控えめながら、いまや勝利を手にするために欠かせない存在となった。コーチから昇格した大岩剛監督が指揮を執った6月以降の20試合で、三竿は累積警告で出場停止だった9月23日のガンバ大阪戦を除いて、19試合で先発フル出場を果たしている。
そのうち3試合は植田直通が故障離脱した穴を埋めるため、急きょセンターバックに回っている。それでも主戦場のボランチとして出場した16試合、1440分間はレオ・シルバ、永木亮太、そしてキャプテンの小笠原満男を大きく上回っている。
石井正忠前監督が指揮を執った5月末までは、5試合、わずか104分間にとどまっていた。アントラーズ自体も7勝5敗といまひとつ波に乗れなかったが、大岩体制下では一転して16勝1分け3敗と鮮やかなV字回復を遂げている。
実力者が集う最激戦区のボランチで、指揮官のファーストチョイスとなった三竿こそが常勝軍団を蘇らせたキーマンなのでは――こんな問いかけに、今度は恐縮した表情を浮かべる。
「紅白戦でも毎回のように競争があるし、ポジションが確立されたとは思っていません。周りからの評価というのは僕が決めることじゃないし、特に気にしたこともありません。チームが勝てればいいし、僕自身は大事な場面でのパスミスが何本もあったし、まだまだ課題だらけなので。
ただ、試合に出場し続けることで自信というものがついてきているし、監督からすごく信頼されている、というのも感じている。試合に出ることによって新たな課題が出るし、そうなると練習への取り組み方も変わってくる。すごくいい循環ができているのかな、と思っています」