「すげえよ、アイツの下半身ドリブルは」(柏木陽介)
簡単には倒されない。派手さはない。そして、現状に決して満足しない。浦和レッズのなかで確固たる居場所を築きつつある中盤のダイナモ、長澤和輝のピッチ内外における立ち居振る舞いを注視していると、加入2年目の25歳を表現する“3つのない”が自然と浮かびあがってくる。
迫りくる台風21号の影響でキックオフ前から間断なく大雨が降り続き、競馬にたとえれば重馬場と化した埼玉スタジアムにガンバ大阪を迎えた22日の明治安田生命J1リーグ第30節。劣悪なピッチ状態だからこそ、長澤がより大きな存在感を放ち続けた。
長澤とインサイドハーフを組んだ柏木陽介が、苦笑いしながら試合後に発した言葉が、172センチ、68キロと決して大きくはない体に搭載された強力な武器を物語っていた。
「すげえよ、アイツの下半身ドリブルは」
スリッピーなピッチで相手のプレッシャーを受けても重心がぶれず、バランスを崩さず、ゆえに倒れない。重厚感あふれるプレースタイルの源泉はドイツの地にあると、長澤が笑顔で説明してくれた。
「ピッチで言えば、本当に比べものにならないくらいドイツのほうがゆるいので。芝生の質がねとねとしていて滑っちゃうので、そういうなかでプレーしていくと慣れていって、滑らなくなるんですよ。そういう経験もあるので、別に埼玉スタジアムのピッチがゆるいとは思いませんでした」
千葉県市原市で生まれ育った長澤は、八千代高校をへて2010年に専修大学に入学。すぐにレギュラーを獲得し、2年時からは関東大学リーグ3連覇へチームを導いた逸材が卒業後に選んだ道は、Jリーグではなくブンデスリーガだった。
当時2部だったケルンへの加入が発表されたのは2013年12月。シーズンの後半戦だけで10試合に出場して1ゴールをあげて、2部優勝と1部復帰に貢献すると、2016年夏までの契約がいきなり2年間延長されるほどケルン側から惚れ込まれた。