シャビ、ペップらが絶賛したその才能
「ビジョンが素晴らしい。あの感性は天性のものだ。練習では決して会得できない」(シャビ・エルナンデス)
「実際に対戦して、彼の凄さを思い知らされた。一緒にプレーできたら楽しいだろうね」(アンドレイ・イニエスタ)
「類稀なセンスの持ち主。いずれはアーセナルを、いや、イングランドを背負って立つのだろう」(ジョゼップ・グアルディオラ)
8年前、バルセロナの監督、選手はジャック・ウィルシャーを絶賛した。繊細なボールタッチと的確な状況判断は、当時全盛を誇ったカタルーニャの強豪をも魅了したのである。
そしてグアルディオラの言葉を借りるまでもなく、ウィルシャーがイングランド・フットボールの軸となる日は近い、とだれもが考えていた。しかし、彼の旺盛なファイティング・スピリットが行く手を阻むとは、実に皮肉である。
身長172cm・体重68kgと決して大柄ではないが、ウィルシャーはボディコンタクトを厭わないタイプだ。長短のパスで攻撃を操るだけではなく、からだを張って守備にも貢献した。無理な体勢からスライディングを仕掛けるシーンもたびたびあった。
その代償が両足首、腰、左足ハムストリングなどの負傷であり、長期の戦線離脱も余儀なくされた。こうした負の連鎖に、アーセナルのOBで、アーセン・ヴェンゲル監督の采配、選手管理に疑問を持つイアン・ライトは次のように語った。
「ヴェンゲルはドクターの意見には耳を貸さず、選手のコンディションを独断で判断するという噂を聞いた。ウィルシャーの相次ぐ負傷は、ヴェンゲルの責任といって差し付けない」
ライトの発言は伝聞に基づいている。伝聞は勘違い、思い込みなどが入り交じり、情報の正確性には欠けるものだ。ましてライトは反ヴェンゲルの急先鋒。話半分程度に受け止めておいた方がいいだろう。
だが、負傷と出場を繰り返し、2008~戦列を離れた期間がトータルで2年半を越えたウィルシャーを見ていると、リハビリに努めているのか、普段からケガに強いからだ造りに励んでいるのか、と疑いたくもなる。
近年のアーセナルは負傷者が多いため、ライトの発言もあながち的外れではないものの、やはり本人の姿勢が一番の問題だ。4年前、ウィルシャーはナイトクラブで喫煙する姿が目撃されている。自己責任が問われてしかるべきだ。