植田の劇的決勝点。9年前に想いを馳せると…
後半のアディショナルタイム。セットプレー。ヘディングによる決勝ゴール。しかも、決めたのはディフェンダー。9年もの時空を超えて、カシマサッカースタジアムでデジャブが起こった。
「優勝するときは、こういう試合がいくつかある。というか、こういう試合がないと優勝できない。今日は久々にガッツポーズが出てしまった。いつもは冷静に見ているつもりなんだけど」
鹿島アントラーズの前身である住友金属工業蹴球団時代から在籍し、1995シーズンから強化部長職を務める生き字引、鈴木満常務取締役を思わず興奮させたシーンは後半47分に訪れた。
MF永木亮太が蹴った右コーナーキック。マーカーのDF金正也を引き離すように、ファーサイドからニアサイドへ飛び込んできたDF植田直通が完璧なタイミングで宙を舞った。
頭に弾かれた強烈なボールがガンバ大阪の守護神、東口順昭の牙城を崩す。1‐1の均衡を破る、劇的な決勝ゴール。歓喜の輪の中心でヒーローの植田が雄叫びをあげ、大歓声でスタジアムが揺れた。
思い起こされるのは、ホームにジュビロ磐田を迎えた2008年11月29日。MF増田誓志(現清水エスパルス)の直接フリーキックに、DF岩政大樹(現東京ユナイテッドFC)がヘディングを見舞う。後半49分に決まった劇的な決勝弾で首位をキープしたアントラーズは、続くコンサドーレ札幌との最終節も制して連覇を達成した。岩政も植田も、殊勲のゴールがともにシーズン2得点目だった。
「あれだけ攻めていてもなかなかシュートが決まらないなかで、あのまま引き分けに終わるのと勝ち切るのでは全然違う。ウチの選手たちは、決勝戦みたいな舞台になると集中力を増して乗ってくる。その意味でも、そういう雰囲気をサポーターが作ってくれたのもよかったよね」
鈴木常務取締役が再び目を細めた。2位の柏レイソルに、勝ち点で8ポイント差をつけた。首位の座を確固たるものにするシーズン20勝目は、連覇への流れを加速させるとともに大きな意味をもっていた。