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筑波大学、天皇杯16強敗退も“ジャイキリ”連発で残した衝撃。青年たちが経た大冒険

第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会で、Jリーグ勢相手にジャイアントキリングを演じ続けた筑波大学(茨城県代表)の旋風が止まった。カシマサッカースタジアムでJ1の大宮アルディージャと対峙した20日の4回戦で0‐2と敗れ、1992年のJリーグ発足後では初めてとなる大学勢のベスト8進出を逃した。卒業後にはジュビロ磐田への加入が内定しているFW中野誠也(4年)が“幻”の同点ゴールを放つなど、互角以上の戦いを演じた90分間の価値を追った。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

試合後、たまらず苦笑いしたエースFW中野誠也

大宮アルディージャ戦に臨んだ筑波大学のスターティングイレブン。下段中央が中野誠也
大宮アルディージャ戦に臨んだ筑波大学のスターティングイレブン。下段中央が中野誠也【写真:松岡健三郎】

 自分に力がないから負けた。J1の大宮アルディージャに0‐2で屈し、ジャイアントキリング旋風を止められた瞬間に抱いていたすっきりした気持ちが、時間の経過とともにもやもやしたそれに変わってくる。筑波大学のエースストライカー、中野誠也(4年)がたまらず苦笑いした。

「自分としては、入っていなかったイメージをもっていたので。シュート自体の感覚はよかったけど、キーパーの塩田(仁史)さんがいい反応をしていたので、かき出されたのかな、という感じだったんです」

 ペナルティーアークのあたりから、思い切り右足を振り抜いた後半28分の場面。強烈な弾道はバーを直撃してほぼ真下に落下し、ゴールライン付近でバウンドしてピッチ内に戻ってきた。

 シュートの軌道があと数センチ低ければ――同点に追いつく絶好のチャンスを逃した無念の思いを、負けた悔しさとともに、さらに成長していくための糧に一度は変えたはずだった。

しかし、ロッカールームでチームメイトたちから、インターネット上で急速に拡散されていた動画を見せられた。バウンドした瞬間にゴールラインを割っているのではないか、と話題になっていた。

 アルディージャ戦を録画中継するスカパー!の放送にも急きょ出演し、あわや同点のシーンのVTRをじっくりと見た。もやもやした思いが占める割合が、ますます大きくなってきた。

 もっとも、審判団には2人の追加副審も加わっていた。きわどいプレーに対する判定を補助するために、ゴールライン上で目を光らせていた。それでもミスが起こったのか。いや、人間がジャッジする以上は仕方のないことだ。揺れる心に喝を入れるように、最後は笑顔で自らに言い聞かせた。

「いいかたちでシュートにまでもち込めましたし、あとは自分が綺麗に決めていればよかった、というだけの話なので。自分が持っていなかった、という言葉しかないですね」

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