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セリエA 7年前

「正しい瞬間に正しい場所に」。準スター軍団ナポリ、保守的かつ冒険的な崩しの作法【西部の目】

17日、セリエA第4節が行われ、ナポリはベネヴェントを相手に6-0で大勝した。相手が昇格組であったとはいえ、その攻撃力をいかんなく発揮。ナポリ一帯の美しい風景を評した「ナポリを見て死ね」という言葉があるが、イタリア南部の都市にあるサッカーチームもヨーロッパ屈指の美しさを誇っている。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

ナポリを見て死ね。ヨーロッパ屈指の美しいチーム

 Vedi Napoli, e poi muori. ナポリを見て死ね――それほど風光明媚ということなのだが、SSCナポリのサッカーも美しい。現在、ヨーロッパでも屈指の美しいチームだろう。

 4試合を消化した時点ではセリエA首位、15ゴールも最多。昨季は3位だったが94ゴールはやはり最多だった。6-0で圧勝したベネヴェント戦は相手が昇格したばかりとはいえ、前半で4ゴールを奪って早々に決着をつけている。

 ナポリの美しさはそのパスワークにある。ボールはきれいに人から人へ流れ、その間に周囲のボールを持たない選手も常にパスを受けられる場所へ流れていく。一時期、日本では「人とボールが動くサッカー」というフレーズが流行った。ナポリのパスワークはまさにそれだ。もっとも、人だけ動いてもサッカーにならないし、ボールだけ動かすのも難しいわけだが。

 ボール扱いに優れたプレーヤーは多いけれども、むしろ受けの技術が目を引く。「人とボールが動く」というと、めまぐるしくも激しい多大な運動量を連想するかもしれないが、ナポリの選手たちは決して急いでいないし速く走ってもいない。ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい場所にいる。そのために必要な速度で移動しているだけだ。

「走る選手はダメな選手、走るチームは良くないチーム」

 かつてヨハン・クライフがそう言ったとき、多くの人は首を傾げた。走る選手は良い選手で、走るチームは良いチームだと誰もが考えていたからだ。しかし、例えば攻撃において走るのはパスを受けるためであって、走ることそのものは目的ではない。

「正しい瞬間に正しい場所にいること」(クライフ)

 それは走行距離にもスプリント回数にも表れはしない。ジャストなタイミングにそこにいるためには、むしろ走りすぎてはいけないのだ。バルセロナの走行距離やスタスタ歩いているだけのメッシを見ればわかる。ナポリを見ればわかる。

 その昔、英国でこんなサッカーの漫画があった。凄い勢いで走っている選手に観客が聞く。

「急いでどこへ行くんだ?」

 走りながら選手は答える。

「さあ、俺にもよくわからないんだ」

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