何十回も見た光景。ルーティーン的なシュート
前線右寄り、いつもの場所でイニエスタからのパスを受けたメッシは、前面を塞ごうとする相手をいなしてカットイン、小さなキックフェイントでもう1つ左へ持ち出す。そして次のDFが来る前に間髪入れず逆サイドへの低いシュートを決めた。
17/18シーズンUEFAチャンピオンズリーグの開幕戦、バルセロナの3点目はもう何十回も見たような光景だった。カットインした後、もう一歩左へ持ち出したことでGKブッフォンに体重移動を余儀なくさせ、逆へ低く放たれたシュートに対して無力化する。ドリブルの歩幅のまま素早くシュートできる特徴を生かした、見慣れたメッシの得点シーンだった。
リオネル・メッシがサッカー史上のどの位置にいるのかはわからない。アルフレッド・ディ・ステファノ、ペレ、ディエゴ・マラドーナより上という人もいるだろうし、そこまでではないという意見もあるだろう。いずれにしても史上最高クラスであるのは確かだが。
アルゼンチン人の琴線に触れるのは、たぶんマラドーナだと思う。どうってこともないチームを率いて、ボロ雑巾のようになりながらも独力で別次元へ引っぱり上げた力業は、ペレもディステファノもなし得なかった偉業だ。桁外れの天才であり、ここという時、最も苦しい時に、誰も見たこともないようなプレーですべてをひっくり返した。
レオ・メッシには、今のところディエゴの神秘的なパワーは感じない。カオスだったバルセロナ、弱小ナポリ、自分を盛りたてるために自分以外が凡庸だったアルゼンチン代表を牽引したマラドーナと、恵まれすぎた環境にいるメッシを比較することはできない。また、マラドーナとはプレースタイル自体も違っている。
マラドーナ世代にとって、メッシは「よく出来たマシーン」に見えるかもしれない。いつも同じようにプレーし、リプレーのようなゴールを量産する。ユベントス戦での2ゴール、そしてポストとブッフォンの背中に防がれたシュートも、どこかで見たようなシーンであり、ルーティーンとさえいえる。