「今シーズンで一番、サポーターに後押しされたゲームだったなと思う」(名波浩監督)
何としても勝たなければいけない試合だった。
今シーズン、ヤマハスタジアムで開催されるホームゲームは1試合を除いてチケットが完売している。毎試合、大歓声を受けて戦えることは選手冥利に尽きるだろう。スタジアムの雰囲気は常に素晴らしいが、この試合におけるサポーターのボルテージは異様なほど高かった。
「こんな展開になったので、『絶対に負けたくない』という気持ちを、ベンチメンバー、上で見ている選手達、もちろん(欠場した中村)俊輔も感じてくれたと思う。この夏休みラストゲームでどうしてもサポーターに勝利を届けなきゃいけなかったですし、個人的には今シーズンで一番、サポーターに後押しされたゲームだったなと思う」
“12番目の選手たち”が作り上げた最高のムードに、名波浩監督は感謝を口にした。また、敵将・吉田孝行監督もこう振り返る。
「後半のいい時間帯に点が入ったが、その後に失点するのがあまりにも早かった。相手のホームということで、そこからスタジアムの雰囲気がガラッと変わった」
明治安田生命J1リーグ第24節。ジュビロ磐田はヴィッセル神戸と激突し、2-1と逆転勝利を収めている。
決して簡単な試合ではなかった。前半立ち上がりのピンチを切り抜けると、磐田が攻勢を強めた。24分にはアダイウトンの放ったループシュートが絶妙なコースに吸い込まれていくはずだった。しかし、カバーに走った渡部博文にクリアされてしまう。映像を確認すれば手でボールを弾き出した“ように”見える。ハンドであれば磐田にPKが与えられるべきだったが、主審、副審ともにCKを指示。ジャッジが覆ることはなかった。
レフェリーの判定は尊重されなければならない。Jリーグからのアナウンスがない現段階(本コラムを執筆した8月28日)で、あのプレーをハンドと断定することは避けたい。
だが、磐田としてはやるせない思いだっただろう。冷静さを取り戻すには時間が必要だった。しかし、自然と増幅する闘争心がチームをより強固なものにしたとも言える。
「あの判定で逆に火がついた。負けたらもったいなかったし、前節のセレッソ戦で引き分けている中では、今日の試合で逆転できたことが非常に大きいかなと」
仲間たちと同様、川辺駿もまた燃え上がる気持ちを勝利への執念に昇華させ、チームを牽引するパフォーマンスを見せた。