いぶし銀の輝き放った「球際の強さ」
ピンチになりかけると、いつも川崎フロンターレの「10番」が戻ってきた。横浜F・マリノスの生命線となる両翼、齋藤学とマルティノスを何度止めたことか。それでも、照れ臭そうに大島僚太は謙遜する。
「ほとんど相手がコントロールミスをしたところを奪ったので。ただ、ああいう場面で抜かれないことは大事。スカウティングでも、相手の特徴はサイドの2人だとわかっていたので。ディフェンスラインの負担が少しでも減れば、という思いで全員に戻る意識が強くあったと思います」
後半5分にはDFエウシーニョと挟み撃ちするかたちで、マルティノスからボールを奪った。3分後には自陣からカウンターを仕掛けた齋藤から、わずかながらボールが離れた瞬間に狙いを定めてかっさらった。
圧巻のシーンは同20分。カウンターを発動させたマルティノスから縦パスを受けたワントップのウーゴ・ヴィエイラが、対峙するDF谷口彰悟とDF奈良竜樹をフェイントで振り切ろうとした直後だった。
ヴィエイラが旋回する方向を予測していたかのように、猛然とプレスバックしてきた大島が体を入れるようにしてカット。そのまま反転して、MF家長昭博へカウンター返しとなる縦パスを繰り出した。
14戦連続で負けなしだったマリノスを、ホームの等々力陸上競技場に迎えた9日の明治安田生命J1リーグ第25節。上位戦線への生き残りをかけた大一番で、大島の球際の強さがいぶし銀の輝きを放った。
「どちらかと言うと相手のスピードを遅らせて味方が戻る時間を作る、という守り方をいまはやっているので。チームの誰かが戻ればと思っていたなかで、たまたま僕のところに来たので、ボールを取れたという感じですね。ボランチのどちらかがカバーしよう、というかたちでやっていたので」