広告料収入の増加。特筆すべきサガン鳥栖の推移
2016年度におけるJクラブの収支決算が出そろった。3月期決算の柏レイソル、ジュビロ磐田、Y.S.C.C.横浜のクラブ経営情報が7月下旬に開示されたことに伴うもので、1月期決算の50クラブの経営情報が先行発表された5月下旬の段階を含めて、Jクラブ全体で顕著な傾向が見られる。
それは営業収益の二本柱のひとつ、広告料収入が大きく伸びていることだ。J3が創設された2014年度以降の平均値は8億2745万円、8億7115万円、9億1132万円と推移。もうひとつの柱・入場料収入が3億2157万円、3億3654万円、3億4528万円と微増なのとは対照的な軌跡を描いている。
J1に限定すれば2016年度の平均は17億円で、前年度の15億2700万円から約1億7300万円増。Jリーグ・経営本部の青影宜典クラブ経営戦略部長(兼クラブライセンスマネージャー)は、広告料収入を大きく伸ばしたクラブとして名古屋グランパスとサガン鳥栖をあげている。
なかでもサガンの広告料収入は2014年度の7億8900万円から12億300万円、そして16億3100万円と右肩上がりで推移。鳥栖市の人口が全53クラブのホームタウンのなかで最も少ない約7万2000人であることを考えれば、特筆すべき数字と言っていい。
サガンの歴史を紐解いてみると、クラブ経営面において2つのターニングポイントを迎えていることがわかる。まずは2011年5月。サガンを運営する株式会社サガン・ドリームスの代表取締役社長に、非常勤役員だった竹原稔氏が就任したことだ。
竹原社長のもとで初めて迎えた、2012年1月期の広告料収入は2億5300万円だった。当時はJ2だったとはいえ、6年間で約6.45倍の規模にまで急成長させた理由を、同社長は「選択と集中」と説明してくれたことがある。
「クラブの能力的に数多くのことはできないので、今年はこれと選択した売り上げに対して徹底かつ集中的に取り組む。そうした努力をシンプルに積み重ねてきただけなんです」