後半開始直前、ピッチ上で異彩を放っていた空間が
後半のキックオフへ向けて、両チームの選手たちが姿を現しはじめたノエビアスタジアム神戸のピッチ。ヴィッセル神戸が2人の選手を同時に交代させる用意を進める一方で、異彩を放つ空間があった。
大宮アルディージャを迎えた29日の第19節で待望のJ1デビューを果たした新外国人、ルーカス・ポドルスキが自陣の中央でおもむろに味方をつかまえ、身ぶり手ぶりで何かを熱く訴えかけている。
時間にして1分以上は続いただろうか。両チームともに無得点で折り返した後半で勝負をかけて、白星をもぎ取るために。キーマンを託された左サイドバックの橋本和が、会話の内容を明かしてくれた。
「練習のときから、ちょっとした英語で割かしコミュニケーションを取ってきたほうなんですよ。あのときは『左利きの自分が開いてボールをもつと、(左サイドバックの)お前の動きがすごくよく見える』と。だからポドルスキがいい体勢でボールを受けたら『思い切って前へ飛び出してくれ』と。そう言われました」
今年3月に引退したドイツ代表で、130試合に出場して49ゴールをマーク。3度のワールドカップに出場し、背番号「10」を託され、2014年のブラジル大会では頂点にも立った32歳のストライカーは、果たしてどのようなパフォーマンスを魅せてくれるのか。
1万9415人のファンやサポーターが駆けつけ、期待と興奮が渦巻くなかで午後7時のキックオフを迎えた前半の45分間は、残念ながら拍子抜けの思いを禁じ得なかった。
気温29.5度、湿度82%、なおかつ無風という蒸し風呂のような劣悪なコンディションにスポイルされたのか。あるいはお互いを知り、良好なコンビネーションを構築するための時間がまだ足りなかったのか。
ヴィッセルでも「10番」を託された男は、ほとんど動けなかった。放ったシュートは1本だけ。終了間際に放った直接フリーキックは、壁に入ったアルディージャのDF菊地光将の頭に防がれた。
むしろ目立ったのは、チームメイトに対する派手なジェスチャーだった。カウンターに転じたときのパスがずれたとき、クロスの軌道が合わなかったときは容赦なく吠えまくり、正確なボールを要求した。