率直に反省したシュートの場面
久保建英がJ1デビューを果たしたピッチ上には、同じFC東京U-18出身の椋原健太がいた。ただし対戦相手として。東京からセレッソ大阪へ移籍した椋原は今シーズン途中の8月15日付でサンフレッチェ広島への移籍を果たし、J1残留に貢献した。J1第33節の東京戦でも右サイドバックとして先発、対人守備に上下動にと、効果的な働きを見せていた。
彼は試合中、久保にこう話しかけていたという。
「憶えてる? きょうはダメだよ!」
ことし4月15日のJ3第5節、セレッソ大阪U-23の一員としてオーバーエイジ枠で出場した椋原は、久保にJ3での初ゴールを許し、15歳10カ月11日でのJリーグ最年少得点記録達成の瞬間を見せられていたのだ。二度同じ目に遭ってはたまらない。
ひとまわりほどの年齢差はあっても青赤一門の先輩後輩同士、話しかけられる距離感があるのはいいが、点を獲られたら面目が立たない。結果的に初出場初ゴールとはならなかったものの、椋原の心中としてはひやひやものだったらしい。「最後パスを出すところを出さず、自分で撃っていったのは助かりました」と、胸を撫で下ろしていた。
結果を残したいがゆえの選択だったのではないかというのが、椋原の分析だった。まだ若く評価が確立していない選手であれば、まずは目に見える結果を残して能力を証明していかなくてはならない。
久保の技術は対戦相手の広島から見ても「みんなベンチに帰ってきてから『巧いよね』と感心しきりでした」(椋原)というほどのものではあるが、はたして点を獲りたいという純粋な欲が勝ったものなのかどうか。
アディショナルタイムに久保が自ら持ち込んで撃った中央からのシュートは、広島の守護神、林卓人によって阻止された。決まっていれば2-2の同点で勝点1を持ち帰ることができたアウェイゲーム。久保は率直に反省した。
「自分としては、ディフェンスの選手に詰めてきてもらう状況をつくって股下(を通すコース)でファーに蹴れたらいいなと思ったんですけど、ちょっとコースがずれてニアというかキーパーの正面に行ってしまって。
あれがファーだったらもしかしたら(決まっていたのでは)と考えると、悔しいというのもありますし、やっぱり狙ったところにシュートが行かないのは練習不足なので、帰ってからもっともっと練習したいと思います」