無名選手揃いのチームで優勝したモナコ
昨季のリーグアンの、ASモナコ優勝はセンセーショナルだった。
ロシアの富豪が経営に参画して強化を進めていたとはいえ、ファルカオ、ハメス・ロドリゲス、ジョアン・モウチーニョらスター選手を引き抜いてタイトル獲得を狙った戦略をすっぱりと捨て(そこにはファイナンシャルフェアプレー違反を回避といった事情も絡んでいたが)、若手育成型にシフトした、スタート時はほぼ無名の選手揃いのチームで、彼らはフランスの頂点に立った。
その結果、キリアン・ムバッペというメガスターが誕生し、この夏のメルカートでは、ティエムエ・バカヨコはチェルシー、ベルナルド・シルバとバンジャマン・メンディはマンチェスター・シティと、優勝メンバーは破格の移籍金とともにビッグクラブへと羽ばたいている。シティがメンディのために支払った約5000万ポンドの移籍金は、ディフェンダーのサッカー史上最高額だ。
トマ・ルマールのアーセナル移籍も秒読みと言われ、リーグドゥ(2部)降格からのカムバックを支えたストライカーのバレリー・ジェルマンもすでにマルセイユへと鞍替えした。
ムバッペも、史上最高額の移籍金を用意したレアル・マドリーとほぼ合意に達したという情報が流れるなど、モナコを去る可能性は高い。
とんでもなくエキサイティングだった昨季の優勝メンバーがごっそりいなくなるのは残念でならないが、クラブの台所は素晴らしく潤った。ロシア勢にとってのモナコ再建計画の第一ステージは、見事に成功を収めたといえるだろう。
この成功の影には、クラブの新体制構築に尽力したと言われるある人物がいる。ポルトガル人の辣腕テクニカルディレクター、ルイス・カンポスだ。
同胞のジョゼ・モウリーニョやレオナルド・ジャルディム同様、選手としての功績はないが、早くから指導者道を極め、35歳から25年間、ポルトガルのクラブで監督のキャリアを積んだ。2013年、モナコ再建にあたってバシリエフ副会長の片腕として引き抜かれる前は、モウリーニョ率いるレアル・マドリーでスカウティングを担当し、互いに影響を与え合ったと言われている。