4人のディフェンダーが並んでいた最終ライン
キックオフを告げるホイッスルを待つ、敵地・味の素スタジアムのピッチ。サンフレッチェ広島の最終ラインには、アウェイ用の黄色いユニフォームに身を包んだ4人のディフェンダーが並んでいた。
26日に第2戦が行われた、YBCルヴァンカップのプレーオフステージ。ノックアウトステージに進む最後の1枠を決める一戦でひとつの歴史が実質的な終焉を迎え、そして新たな扉が開かれた。
サンフレッチェはJ2を戦っていた2008シーズンの途中から、「3‐4‐2‐1」をベースとしながら攻撃時には「4‐1‐5」へ、守備時には「5‐4‐1」となる独自の「可変システム」で戦ってきた。
ボールをもったときには、前線へのパスコースがいくつも生まれる。翻って相手ボールのときには、自陣に強固なブロックを形成する。攻守両面で数的優位な状況を作り続け、対戦相手を凌駕してきた。
2012シーズンから指揮を執った森保一監督のもとでさらに磨かれた「可変システム」は、4年間で3度のJ1制覇となって結実。リーグを代表する強豪の一角に、サンフレッチェを仲間入りさせた。
迎えた今シーズン。サンフレッチェは開幕からまさかの低迷を強いられる。前半戦であげた勝利はわずか2つ。下を見ればアルビレックス新潟しかいない、J2への降格圏となる17位で折り返した。
直後の今月4日に、森保監督の退任が電撃的に発表される。クラブ側は慰留に努めたが、プロとして結果を残せなかったことに対して責任を取りたい、という決断を翻意させることはできなかったとされる。
新たに招聘されたのは、クラブの黎明期にコーチ及び選手を務めたOBでもあるヤン・ヨンソン監督。スウェーデン生まれの57歳の新指揮官は、15日の就任会見でこんな言葉を残している。
「(最終ラインを)5バックにすると、どうしても前線が1人になって寂しくなってしまう。もちろんいまのシステムでいいところもあるが、悪いところも出てくる。コーチングスタッフといろいろ相談しながら決めていくが、シチュエーションによっては4‐2‐3‐1や2トップにする可能性も考えている」