アビスパ=城後。クラブの象徴となった背番号10
日々あらゆる物事が動き、変化していくサッカー界において、10年以上の長きにわたって同じ場所でプレーし続けることは簡単ではない。それはもちろん日本でも例外ではなく、ずっと変わらない環境を維持する難しさは誰もが理解しているところだろう。
そんな世界だが、ごく稀に例外も存在する。先ごろ現役引退を表明したフランチェスコ・トッティは、プロ選手としてデビューしてからの25年間ローマというビッグクラブから一度も出ることはなかった。
彼のように移籍することなくひとつのクラブで長く活躍を続ける(続けた)選手のことを、イタリアでは「バンディエラ」と呼ぶ。英語では「フランチャイズ・プレーヤー」と表わされ、そういった選手はクラブやリーグの象徴として称賛される。
日本のJリーグにも、トッティやかつてのパオロ・マルディーニのように「バンディエラ」としてファンから愛される選手がいる。アビスパ福岡の10番を背負う、城後寿はその1人だろう。
国見高校時代に全国高校サッカー選手権優勝やインターハイ連覇を経験した城後は、2005年に地元・福岡県に本拠地を置くアビスパ福岡に入団して以降、現在までレンタル移籍などを一度も経験せずにアビスパ一筋を貫いている。
プロ4年目の2008年から10番を任され、昨季までの12年間で3度のJ2降格を経験。何度もJ1の上位クラブからオファーを受けながら、すべて断ってきた。31歳になった現在は4度目のJ1昇格を目指して戦っている。
そんな城後をファンはどう思っているのだろうか。本拠地レベルファイブスタジアムの周辺で取材を進めていると、6歳になる長男と3歳の次男とともに3人揃って背番号10のユニフォームを着てアビスパの応援にやってきたある40代の男性ファンはこう言った。
「象徴というか、なくてはならない存在かな。『アビスパ=城後』じゃないかと思います。アビスパが潰れかけた時も残ってくれたので、城後選手を一番応援したい」