恩師から届いた5文字のメッセージ
スマートフォンの画面をスクロールしていくうちに、思わぬ人物から祝福のメッセージが届いていることに、清水エスパルスのDF鎌田翔雅(しょうま)は気がついた。
「おめでとう」
無料通話アプリ『LINE』を介して簡潔に、それでいて熱い思いが十分に伝わってくる5文字を送ってきたのは、いまも恩人として慕う湘南ベルマーレの曹貴裁(チョウ・キジェ)監督だった。
「本当にびっくりしましたけど、ちゃんと見ていてくれているんだと思うと、やっぱり嬉しかったですね。すぐに『ありがとうございます』と返信しました」
一生の思い出に残る、2017年7月8日の夜が更けようとしていた。つい数時間前、ホームのIAIスタジアム日本平にガンバ大阪を迎えたJ1第18節で、エスパルスは2‐0の完封勝利を手にしていた。
ガンバからあげた8年ぶりとなる白星を決定づけたのは鎌田。プロになって10年目、J2や天皇杯を含めた公式戦では実に170試合目における初ゴールを決めたのは、1点リードで迎えた前半40分だった。
FW金子翔太が思い切って放った強烈なミドルシュートを、日本代表GK東口順昭が大きく左へ弾く。このとき、右サイドをフォローしていた鎌田は「何となく流れのなかで」と、ニアサイドへ潜り込んでいく。
こぼれ球を拾った左サイドバックの松原后が、すかさず金子が詰めていたファーサイドへクロスを放つ。これをDF初瀬亮がかろうじて頭で防ぎ、ボールは反対側のゴールラインを割ろうとしていた。
コーナーキックになるのか――ガンバだけでなく、味方の選手までもがボールウォッチャーになる。ほんの一瞬だけ生じた隙を、ボールを支配下に置いたエスパルスのボランチ・竹内涼は見逃さなかった。
慌てて間合いを詰めてきた東口の頭上を越す、ヘディングによるパスをニアサイドに送る。待っていたのは鎌田。日本代表MF井手口陽介との空中戦を制し、無人となったゴールへボールを押し込んだ。
「僕自身も、タケ(竹内)がそのまま外に出すかなと思ったんですけど。たまたまいいボールが来たので、本当に合わせるだけでした」