いつのまにか左タッチライン際に。驚異的な運動量で同点弾を演出
いつのまにか左タッチライン際にいた。降り続く雨で濡れた市立吹田サッカースタジアムのピッチを、縦から横へ。ガンバ大阪の日本代表MF井手口陽介の驚異的な運動量が、後半23分の同点弾を導いた。
左コーナーキックから放たれた、川崎フロンターレのMFエドゥアルド・ネットのヘディングシュート。横っ飛びでキャッチしたGK東口順昭の素早いスローから、ガンバが乾坤一擲のカウンターを仕掛ける。
MF倉田秋を介して、自陣の右タッチライン際でパスを受けた井手口がグイグイとボールをもち運ぶ。敵陣に入ったところでFWアデミウソンとのワンツーから、中央へ直角方向に切れ込んでくる。
左足から放たれたシュートは、危機を察知してポジションを移してきたDF車屋紳太郎の必死のブロックに止められる。跳ね返ったボールが、反対側の左タッチラインを割った直後だった。
ボールを拾ったDF藤春廣輝に近寄り、右手で「急げ」と手招きするゼスチャーでスローインを要求したのは井手口だった。次の瞬間、振り向いた「8番」はカーブの軌道を描いた、高速の低空クロスを放つ。
帰陣していたフロンターレのセンターバック、谷口彰悟は頭上を越えるボールを見送るしかなかった。もう一人のエドゥアルドは、背後にいた192センチの長身ストライカー、長沢駿の存在に気づいていない。
「川崎さんのクロスへの対応を事前に映像で見ていても、かなりチャンスになると思っていたので、味方には『クロスを入れてほしい』と言っていた。あの場面でもディフェンスがまったく見ていなかったので」
こう振り返る長沢と同じ絵を瞬時に描いていたからこそ、井手口はフリーになれる反対側のタッチライン際まで素早く移動していた。エドゥアルドの前にポジションを移した長沢が、すかさず宙を舞う。
4日前の天皇杯で裂傷し、テーピングでガードされていた額の右側に弾かれたシュートが、フロンターレの守護神チョン・ソンリョンの牙城を破る。アシストを決めた20歳は、さらに先をも見つめていた。
「(長沢)駿君を超えても、もう一人裏にいたので。どちらかに合えばいいと思っていました」