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“ジャイキリ”のいわきFC、天皇杯3回戦の会場選定に疑問。「サッカー普及という大義と矛盾」

text by 編集部 photo by Getty Images

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いわきFCが天皇杯の会場選定に疑問を投げかけた【写真:Getty Images】

 いわきFCの大倉智社長が、クラブの公式サイトで天皇杯3回戦の会場選定について言及した。

 7部リーグに相当する福島県社会人1部リーグながら、天皇杯2回戦ではJ1の北海道コンサドーレ札幌をアウェイで破る“ジャイアントキリング”を成し遂げたいわきFC。3回戦では、清水エスパルスと対戦することが決まっている。

 天皇杯を主催する日本サッカー協会(JFA)は今月19日、3回戦以降は対戦カードの下位カテゴリーチームが所属する都道府県の会場を優先して開催する旨を発表。その一例として、「J1・J2 vs 都道府県代表の場合 ⇒ 都道府県代表の会場にて開催」と挙げている。

 しかし、3回戦の試合会場は普段のリーグ戦で清水が本拠地として使用しているIAIスタジアム日本平で行われることが決まっている。大倉社長は「いわき市並びに福島県での開催を思い描いていました。しかし今回、その思いはかないませんでした」と述べている。

 会場が静岡県になったことの理由は、JFAが定めた大会運営要綱に該当するスタジアムが福島県内になかったことが挙げられる。

 JFAは「J1クラブが出場する場合は原則1万5000人以上の収容が可能なこと」「ラウンド16以降の会場では、必ず照明装置が設置されていること」「付帯設備スコアボード(3回戦以降は原則として、大型映像装置であること)」「ピッチは天然芝であること」などを要綱に定めているが、福島県内には1万5000人が収容できる、およびナイター設備を持つスタジアムはない。

 だが大倉社長は、「『試合を下位チームのホームで実施する』という普及の観点と、『J1規模の15,000人収容のスタジアムが必要』という要件の整合性がありません。平日のナイターゲームであることを考えても、『15,000人以上収容のスタジアムでの開催』を条件とすべきではないように思えます」と現行の要綱に疑問を投げかけた。

 またナイター設備についても、「今回の清水エスパルス戦はラウンド32のためナイター設備は絶対条件ではありませんが、可動式のナイター設備を使用するなど、検討の余地はあったことが悔やまれます」と述べている。札幌戦が行われた札幌厚別公園競技場でも可動式のナイター設備が使用されていた。

 スコアボードに関しても「試合運営や演出という観点では、スタジアムに付帯されている方がいいでしょう」としながらも「試合を行う上で『絶対にスコアボードがなくてはいけない』とはまでは思いません」と述べ、天然芝のグラウンドで開催することも「果たして『絶対条件』にふさわしいでしょうか」と、人工芝でも天然芝と変わらない感覚でプレーすることが可能だと主張した。

 総じて大倉社長は「現行の運営要綱は残念ながら、天皇杯が定める『サッカー普及』という大義と矛盾する部分があるように思えます」と語っている。

 いわきFCの運営権を持ち、ユニフォームサプライヤーのアンダーアーマーを提供する株式会社ドームの安田秀一社長も、個人のフェイスブックで「我々いわきFCサイドは事前の通告も一切ないまま、『会場の都合』ということで『清水でのホーム開催』が決まっていました」と投稿している。

 なお、クラブの広報担当者は「サッカーの普及をするという観点と大会の要綱で整合性が取れていない。本当に普及を考えているのであれば、ナイター設備は移動車を調達するなどの工夫もできたはず。いわきFCは普段プロスポーツに触れる機会がないので、J1のチームと対戦することでいわき市の方々や子どもたちに夢を見させて、さらに応援してもらうこともできたと思う」と述べている。

 いわきFCは会場選定に対する異議申し立てを行う意思はなく、あくまでも日本サッカー発展のために最善の方法で試合が行われるべきだという見解を示している。

【了】

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