暫定首位浮上、破竹の7連勝を達成したレイソル
思考回路がパニック状態に陥っても、何ら不思議ではなかった。キックオフの笛が鳴り響いてから一度もマイボールになることなく、セットプレーから大宮アルディージャに先制弾を喫した。
このとき、時計の針は2分にも到達していなかった。チーム全体が浮き足立ったのか。オフサイドでノーゴールとなったものの、直後にもカウンターからMFマテウスに完璧な突破を許してしまう。
それでも、ハリルジャパンに初招集された柏レイソルの若き守護神、22歳の中村航輔は泰然自若としている。気を動転させるどころか、逆転勝利を確信するかのように、心のなかでこう言い聞かせていた。
「失点するなら、早い時間帯ほどいい。流れはウチに来ている」
究極のプラス思考と呼ぶべきか。後半アディショナルタイムの最後のプレーでゴールを割られ、連続無失点試合が「4」に伸びる直前で途切れた5月14日のFC東京戦後にも、こんな言葉を残していた。
「記録だけを求めて戦っているわけではない。一度途切れた方が個人的にはいい」
アルディージャをホームの日立柏サッカー場に迎えた27日のJ1第13節。ACL出場クラブの試合が組まれていない関係で、レイソルが勝てばガンバ大阪を抜いて、暫定首位に立つことがわかっていた。
期待して詰めかけたファンやサポーターを驚かせる幕開けとなった一戦はしかし、中村が思い描いた通りの展開となる。前半のうちに追いつき、後半に入ると怒涛の3連続ゴールで一気に試合を決める。
これで破竹の7連勝を達成。開幕節を除けば、初のJ1制覇を成就させた2011シーズン以来となる首位に立った。それでも、ピッチを離れれば驚くほど寡黙になる男は冷静だった。
「試合が始まる前から、勝てばそういう状況になることはわかっていたので。前半からウチに多くの決定機があったなかで、ミス絡みで同点に追いつくことができた。そういう流れがあったと思うし、後半は相手の隙を狙って得点を重ねていこうということで試合に入りました」