完璧だったマンUの“いなす”戦略
完璧な勝利だった。ジョゼ・モウリーニョに率いられたマンチェスター・ユナイテッドは、クラブ初となるヨーロッパリーグのタイトルを手にし、今季のノルマでもあったチャンピオンズリーグの出場権を手に入れた。
相手は、スタメン11人の平均年齢がわずか22.2歳のアヤックス。大学生のような年代の選手が中心となるチームは、オランダ伝統の4-3-3、そしてハイプレスとショートパスをつなぐ攻撃的なサッカーで欧州を魅了していた。
このEL決勝では、ユナイテッドのCL出場権の行方が大きくフォーカスされたが、20歳のダビンソン・サンチェスと17歳のマタイス・デ・リフトのCBコンビや、19歳のFWカスパー・ドルベリといった次世代を担う選手たちに注目していた人も多かったはずだ。
しかし、試合の立ち上がりからユナイテッドはアヤックスのボールホルダーに対して常に2人がマークに付き、プレーの自由を奪った。抜群の才能を持つものの、まだ経験値の少ないアヤックスの選手たちに対し、世界中の代表選手が集うユナイテッドは完璧な守備網を敷き、ボールを“持たせながら”決定的なチャンスを作らせない。
この試合のスタッツを見ると、ユナイテッドは支配率31.5%:68.5%、チャンスメイク数5回:13回、シュート本数7本:17本、1対1勝利回数7回:24回と攻撃の面では大きく下回る数値を記録していた。
その一方で、選手がボールを持ってプレーしたエリアを見てみると、ピッチを6分割した最後のエリア(ペナルティエリアとその両サイド)では、アヤックスの6.75%に対して、ユナイテッドは9.55%と上回っていた。
つまり、アヤックスはボールを持ち、自らの長所でもある攻撃的なサッカーを実践しようとしていたが、ユナイテッドは“いなす”かのごとく、相手にボールを持たせた上で罠にはめた。