サンフレッチェ広島が苦しんでいる。
ここ数年で三度のJ1リーグ制覇、2015年にはFIFAクラブワールドカップで3位に入った強豪が、今季は第11節を終えた時点で勝点6と降格圏に沈んでいる。
毎年のように主力が抜けながらも、潤沢とは言えない予算のなかで若手育成などでうまくチーム編成をやりくりし、逆境の中でも粘り強く戦ってきたのが広島のスタイルだ。今季も昨季主力であった佐藤寿人やピーター・ウタカが移籍。森崎浩司も引退した。開幕前からケガ人が相次いでいる影響もあるだろう。しかし、さすがにここまでの低迷を誰が予想できただろうか。
チームは生き物であり、ピッチ内外の様々な問題がパフォーマンに影響する。前述のケガ人の問題も含めて、広島の場合、チームドクターであった寛田司の離脱もマイナスに作用しているのではないだろうか。メディカル体制の急な改変はチームに大きな影響を与えかねない。オフト監督時代からを含めれば30年近く、チームのために粉骨砕身、働いてきた寛田は選手からの信頼も厚かったと聞く。
なぜチームドクターは突然、広島を離れることになってしまったのか。ことの発端は、昨季、ドーピング違反騒動に巻き込まれ、防ぎようがない過失によりペナルティ(資格停止をともなわない譴責処分)を受けることになってしまった千葉和彦の“悲劇”が関係しているという。無論、クラブも最善の努力を尽くした上での結果だった。
5月6日発売の『フットボール批評issue16』ではその真相に我那覇和樹のドーピング冤罪を暴いた『争うは本意ならねど』の著者である木村元彦氏が迫っている。
日本におけるドーピング検査の問題点ととともに、広島がこうむった“被害”は決して他のJクラブにとって対岸の火事ではないということも我々は知っておいたほうが良いだろう。
(文:フットボール批評編集部)
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