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出口のところが不幸だとみんなサッカーを嫌いになっていってしまう
――私は編集者として『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』に携わらせていただきましたが、改めてどういう経緯でこの本を書きたい、書こうと思ったのかを加部さんから聞かせていただけますか。
加部 サッカーは割といろんなスポーツの中では進んでいるって思っていたんです。コーチングシステムとかも他の競技に先駆けて確立されている。ところが、実際にサッカーに力を入れている高校に進んだ子たちから、耳を疑うような話が伝わってきたわけです。それなりに名のある高校なのに暴力を振るわれたり、いじめられたりしてどんどん辞めていくとか、本当に酷い状況にあると。
これはある高校のエピソードなんですけど、卒業する3年生を送り出す会で、3年生が全員挨拶していくんですよね。試合に出ていた選手たちは最高の部活生活でしたというような話をするんだけれど、逆にそれ以外の多くの子たちは泣きながら、ケガばかりで試合に出られなくて悔しかったというような話をするわけです。それが毎年繰り返される。
高校でサッカーを辞めていく、競技生活を辞めていく人が多い中で、出口のところが不幸だとみんなサッカーを嫌いになっていってしまうでしょ、というところがまずあった。どうしても伝統的に日本の部活では、何かに耐えること=メンタルの強さを養うことと考えている指導者が多くて。いまだに何か乗り越えていかないと強くなれないみたいな信仰がすごく根強いから、それを覆す本を作りたかったんです。
――それが出発点なんですね。
加部 まず実態を伝えたい。次に本当にそれで世界に通用するのか。伝統的に行われてきたことが本当に正しいのか? 違いますよね、ということを立証していく本を作りたかったわけです。