これまでの鬱憤を晴らすような3得点
ようやく踏み出した一歩は、特大の打ち上げ花火のように鮮やかで派手なものとなった。
JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ第3節・FC東京戦、高卒2年目の小川航基は3ゴールを奪う大活躍を見せた。
これまでの鬱憤を晴らすようなゴールラッシュは、時に迷いそうになりながらも信じた道をひたすら駆け抜けてきた若武者の足跡である。ヤマハスタジアムのピッチには、ストライカーとしての自負と、日々取り組んできた成果を発揮する19歳の姿があった。
1点目と3点目は、名波浩監督からいつも言われていた、PA内で止まらないという教えを表現した。特に3点目のシーン。セカンドボールを拾った上田康太がシュートモーションに入った時、小川は右側に膨らむ動きでオフサイドにならないポジションを取り、こぼれ球に反応できるよう備えた。
フィニッシュ精度の高さは周囲からも一目を置かれている。GKが触れないコースへ冷静に、それも鋭く蹴り込む技術はこの年代ではトップクラスだろう。しかし、これまではシュートを放つ状態を作れずにいた。その意味でも3点目は特に価値がある。ボールが彼の下へ転がってきたのは偶然ではなく、準備を怠らなかったからこそ生まれた必然の一発だった。
試合後、19歳は指揮官への感謝を口にしている。
「名波さんにいつもシュート練習をしてもらっていて、それなのに結果を残せていなかった。まだほんの少しだけど、恩返しができたと思う」
本人も、周囲も『やっと』という思いだろう。だが、過ごしてきた時間は決して無駄ではなかった。