貧しい者はいつまでも貧しい、ブラジルの構造
ブラジルに限らず、中南米諸国の社会構造は、欧米、日本などの先進国と大きく異なる。建国以来、常に巨大な貧富の差が存在しており、支配階級は自らの既得権益を損なわないため、不平等、不公正なシステムを維持することに腐心する。
たとえば、富裕層に対する所得税や相続税が先進国と比べて著しく低く、富める者はいつまでも富み、貧しい者はいつまでも貧しい構造になっている。
無償の学校教育や健康保険制度は、建前としては存在する。しかし、サービスの質が劣悪だから、中流以上の階層はそんなものには見向きもしない。高い授業料を払って子弟を私立校で学ばせ、高価な健康保険を手配して家族の健康を守る。高校までの教育費は高くつくが、授業料が完全無料の一流国公立大学へ送り込めば、十分に元は取れる。そして、彼らが新たな支配階級となる。
一方、大衆の子弟は給料の値上げを求めて頻繁に教職員がストライキを行っているような、無償ではあるが教育の質が劣悪な公立校で学ぶ。レベルが高い国公立の大学にはとうてい入学できず、その大多数は低学歴、低職能ゆえの低賃金に甘んじる。
そして、社会の底辺で喘ぐこれらの大衆に”ガス抜き”として与えられるのがフットボールとカーニバルだ(ただし、ブラジルの場合は大衆のみならず中流以上の階層にもフットボールは絶大な人気があるが)。皮肉なことに、その大衆へのガス抜き装置であるフッボールの最大の祭典のプレ大会で、突然、大衆が反乱を起こした(起こしかけた)のである。