掲出物を禁止されたG大阪サポーター【写真:Getty Images】
21日、Jリーグの村井満チェアマンが、ガンバ大阪ファンが政治的思想を連想させる旗を掲出した一件についてコメントした。
G大阪が16日にセレッソ大阪と対戦した際、ゴール裏のファンが政治的思想を連想させる旗を掲げていたことが問題になっている。クラブは21日、当面は横断幕などの掲出物を全て禁止することを発表した。
この件について村井チェアマンは、「Jリーグを今日のように心から応援して下さる皆様、また海外にいらっしゃる方に不快な思いをさせてしまったことを本当に申し訳なく思っています」と謝罪している。
今回の騒動で思い出されるのは、2014年3月に行われた浦和レッズ対サガン鳥栖の一戦で「ジャパニーズオンリー」と書かれた横断幕がゴール裏に掲げられた事件だ。
「私がチェアマンに就任した2014年に『ジャパニーズオンリー』があって、あの差別問題だけでなく、いろいろな政治的メッセージとか、さまざまなことをケアしなければいけないとあのときに確認しあった。ガンバも当時気になるフラッグがあって、注意してサポーターと申し合わせをしていたんですが、今回また出てしまったということでした」
「非常に難しい問題ですが、もっともっと啓発する必要があるとガンバの社長も認識していますし、我々も認識を新たにしています」
問題のフラッグを掲出したサポーターグループは特定されているが、「掲出した当事者を確認しているところ」で「具体的なことは事実関係を確認したうえでと思っている」とチェアマン。クラブなどへの処分も、当事者の意図を確認してから動く考えだ。
Jリーグとしての処分などは「そこに全く悪意がなかったのかどうかで違ってくる」が、「過去の申し合わせにあったように、これはあってはならないという認識」だ。2020年には東京オリンピックが開催されることもあり、早急な意識改革が必要である。
「歴史的な認識に差があるかもしれませんが、非常に多くの悲しい思いをした方が世界中にいるのは事実です。2020年に向けて、これから数多くの外国人が日本に来ます。認識をそのものをサッカーが伝えていかなければいけないという役割もあると思う」
「『問題は知らなかった』『ファッションでやっちゃった』、そういう認識自体、国際化する社会の中で改めていかなければいけない。それが2014年の決意だったはずです。もう一回、原点にかえらなければいけません」
Jリーグとしてもアンテナの張り方が十分でなかった可能性もある。村井チェアマンがこの件を把握したのは20日の夜で、21日の朝にG大阪の社長から連絡を受けたとのことだが、SNS上ではC大阪との試合の段階から問題視する声があがっていた。
「そこの感覚が甘いといえば甘い。感性が鈍いといえば鈍い。我々はSNSを全てチェックしているわけではないが、そこはもう少しセンシティブでなければいけなかったのかもしれません。そのへんも含めて、我々の課題も検証していかなければいけない」
2014年の問題で浦和には、Jリーグで初となる無観客試合という処分が下された。当事者やクラブだけではなく、日本サッカー界全体が改めて問題と向き合うべき時がきたのかもしれない。
(取材:舩木渉、文:編集部)
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