「一人に10試合のチャンスを与えることはできない」(ハリルホジッチ監督)
長く探し求めてきた恋人に、ようやく出会った心境なのかもしれない。UAE(アラブ首長国連邦)代表との大一番が迫っていた3月上旬。日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督に、その胸中を直撃する機会があった。
約1時間半にわたって熱気を帯びた言葉が飛び出してきたなかで、指揮官は前線の選手について「私はゴールゲッター、ストライカーをずっと探している」とこう言及している。
「誰がいま、点を取れるのかを常に考えている。1シーズンで10点、15点、20点を取れる選手がいるかどうか。我々が抱える問題のひとつであり、そういう選手を求めているからこそ、前線の選手がよく変わる。
たとえば一人の選手に、10試合のチャンスを与えることはできない。チャンスが訪れたときにしっかり点を取って、自分でストライカーのポジションを勝ち取らないといけない」
指揮官が定める条件に対して、満額の回答を弾き出しつつある存在が久保裕也(ヘント)となる。UAE、タイ両代表と対峙した今回のワールドカップ・アジア最終予選シリーズにともに先発して、2ゴール3アシストをマーク。日本代表があげた6ゴールのうち5つに絡む、まさに八面六臂の活躍を演じてみせた。
敵地アル・アインで23日に行われたUAE戦では、開始13分に先制ゴールをゲット。右サイドバックの酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)にパスを要求しながら、右サイドから斜めにゴール前へ侵入。酒井からのスルーパスを、角度のない難しい位置から、スペースのないニアサイドを打ち抜いた。
後半7分には後方からのロングボールをFW大迫勇也(ケルン)が落とし、右サイドで受けた久保が仕掛ける。中央へ走り込んできたFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)が、相手を引きつけているのがよく見えたのだろう。ファーサイドへ送った完璧なクロスが、MF今野泰幸(ガンバ大阪)の追加点を生んだ。