柴崎が訪れたテネリフェ島の日本料理店へ
「ガクはもう2回…いや、3回来たかな」
そう話すのはテネリフェ島最大の都市サンタ・クルスの中心部にほど近い、飲食店が立ち並ぶエリアにある日本食レストランのオーナーである。
こちらに対し「ロロ」と名乗った中年のスペイン人が、テネリフェ島内に数少ない本格的な日本食を味わえるレストランを切り盛りしている。
「ガクは昨日も来たよ。えーっと、食べたのはたしか…」
高級感漂う店構えで、価格帯も庶民的なバルなどに比べてかなり高い。テネリフェ島在住の日本人はほとんどいないため、当然地元のスペイン人の利用がメインだ。この日もジャケットやシャツをまとっておしゃれをした家族連れやカップルで賑わっていた。
「(柴崎が)食べたのはたしか…『みそ汁』『焼いた天然スズキのキノコ添え』『寿司盛り合わせ』…それと『地鶏の焼き鳥』だったね」
ロロさんは落ち着いた口調で柴崎がオーダーしたメニューを教えてくれた。この場面で「昨日」と言われているのは2月23日のこと。つまり柴崎が所属するCDテネリフェの施設で練習を再開した日だった。
そこで筆者は記念すべき日に柴崎が摂った食事を体験すべく、上記4品のうち『みそ汁』『焼いた天然スズキのキノコ添え』『地鶏の焼き鳥』の3品とドリンクを注文した。これだけでおよそ40ユーロ(約4800円)。期待は高まるばかりである。
まず全ての料理が出てくる前に、ドリンクがワイングラスに注がれた。ただの水が味わい深いものに見えてくる。そしてしばらくすると、お通しとしてお吸い物が運ばれてきた。つみれは食べた瞬間に溶け出すほど柔らかく、つゆを飲むと柚子の香りが口の中いっぱいに広がる。