ドルトムント大勝。個々の輝きが結実
たとえ試合のすう勢が決し、時間が限られていたとしても、観衆に、仲間に、そして監督にインパクトを残す。ベンチスタートした選手が出場機会を与えられたら、ゲームに“爪痕”を刻もうとしない者はいない。いつまた次のチャンスが巡ってくるとも限らない。フットボーラーに約束された明日はないのだ。
「あそこが今日は最大のチャンスかなと思った」
香川真司はそう振り返った。2017年3月4日のブンデスリーガ第23節、ボルシア・ドルトムントがホームにレバークーゼンを迎え、6-2で大勝した後のことだ。
香川が投入されたのは73分。既に勝敗の行方は決まっていた。44分にロイスが負傷退場するアクシデントはあったが、試合そのものはドルトムントが支配した。[5-2-3]の布陣で、高い位置を取るラファエウ・ゲレイロとエリック・ドゥルムの両ウイングバックを活かしながら、カウンターではマルコ・ロイス、ピエール=エメリク・オーバメヤン、ウスマヌ・デンベレの弾丸のようなスピードで攻め立てる。
デンベレは、ウイングとトップ下を行き来して、高い創造性を発揮した。6分の先制ゴールを皮切りに、25分にはロイスとのコンビネーションで2点目に繋がるCKを獲得し、そして69分、左サイドからのクロスでオーバメヤンの3点目をアシスト。ケビン・フォラントの単発的な反撃はあったが、若きアタッカーの縦横無尽の活躍でレバークーゼンは死んだも同然だった。
そのデンベレに代わって、香川は投入された。
「やっぱり得点とアシストにはこだわって試合に入りました」
その思いは、香川より先の44分に入ったクリスティアン・プリシッチ、そして後の81分に入ったアンドレ・シュールレも同じだっただろう。
プリシッチは77分、ドゥルムの右からのマイナスの折り返しを、香川の目の前に割って入るようにしてゴールを決める。シュールレは85分、中央突破して獲得したPKを自ら決めた。