復帰までの639日間。選手として特殊な「膝蓋靭帯の骨化」に苦しめられる日々
FCシャルケ04も、半ば諦めていたのかもしれない。“復帰戦”となった昨年12月8日、ヨーロッパリーグのグループI最終戦。凍てつく寒さに覆われたRBザルツブルク戦の試合の後で、内田篤人は次のように述べている。
「シャルケのドクターにも言われたけど、『オレは復帰できると思っていなかった』と。そういう怪我と手術だったので」
2015年3月10日、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦の2ndレグ。アウェイのレアル・マドリー戦を最後に、内田が右膝の腱の負傷と骨化により、639日に渡ってピッチから遠ざかることになったのは周知のとおりである。
今冬にバイエルン・ミュンヘンからシャルケにレンタル移籍してきたホルガー・バトシュトゥバーも、その選手人生の中で度重なる負傷に悩まされてきたが、最長は12/13シーズンに負った『十字靭帯断裂』による532日。もちろん重症だ。
しかし、内田が負った『膝蓋靭帯の骨化』という特殊な症例に比べれば、サッカー選手が負う怪我としてはまだ一般的なものと言える。
EURO2012で主力を張った元ドイツ代表CBの不屈の闘志には、感服せざるを得ない。だが、内田も引退の淵まで追い込まれながらそれと同等、もしくはそれ以上の精神で再び這い上がってきたのだ。だからシャルケのドクターは、稀な症状であることも踏まえて「復帰できると思っていなかった」と、驚嘆と畏敬の念を込めてそう漏らしたのだろう。