「最後のほうはあきらめていました」
ヨーロッパの冬の移籍市場が閉まる1月31日が迫ってくるにつれて、絶望感が占める割合のほうが大きくなってきた。スペイン1部セビージャとの間で進めてきた日本代表MF清武弘嗣の移籍交渉に関して、セレッソ大阪の玉田稔代表取締役社長は破談になると半ば観念していた。
「最後のほうはあきらめていました。話が進まない、これはダメだなと。移籍金の金額もそうですけど、ウチもお金があるわけでもないので。分割や先延ばしで払おうとしたんですけど、そういうことを先方がなかなか飲み込んでくれませんでしたからね」
セビージャで完全に出場機会を失っていた清武が、Jリーグへの復帰を希望している――。セレッソ側がこうした情報をキャッチしたのは、年が明けて間もない1月上旬だった。しかも、清武の代理人を介して、古巣セレッソでのプレーを希望していることが伝わってくる。
大熊清チーム統括部長を中心にさまざまな検討がなされた結果、玉田社長の承認のもと、同13日にセレッソがオファーを出す。しかし、違約金を600万ユーロ(約7億2000万円)に設定しているセビージャの反応は鈍かった。それほどまでに金額面で乖離していた。
昨夏にハノーファーから清武を獲得した際に、セビージャが支払った移籍金は650万ユーロ(約7億8000万円)とされている。セビージャが可能な限り清武獲得資金を回収したいと考えるのは当然の流れで、値下げはもちろんのこと、玉田社長が言及した分割や先延ばしにも応じる気配を見せなかった。
平行線をたどっていた移籍交渉に、劇的な変化が生じたのは現地時間1月29日。アルゼンチンの強豪ロサリオ・セントラルに所属する23歳のホープ、MFワルテル・モントーヤを獲得することで合意に達したことがセビージャから発表された。
合意した契約期間は4年半だが、セビージャへの合流時期が2月か、あるいは今シーズン終了後になるかは未定ともつけ加えられた。3枠あるEU外選手枠がすでに埋まっていたためで、アルゼンチン人のホルヘ・サンパオリ監督の構想から実質的に外れていた清武の移籍交渉が必然的に加速される。