この記事は2011年3月発売の『サッカー批評issue50』に掲載されたものです。少し古い記事ではありますが、現在のJリーグが抱える移籍制度の問題点は大きく変わっていません。16日に掲載した『検証・移籍ルール変更後のJリーグ ~Jクラブは直面する現実にどう対処すべきか?~』と合わせ、移籍制度の今後を考えていくことができれば幸いです。(編集部)
2009年のオフはアルビレックス新潟が刈られ、2010年のオフは清水エスパルスが刈られた――。
国内移籍ルールの変更(国内間0円移籍解禁!)に伴って起きたこれら2クラブの“惨状”に多くの読者は同情の念を禁じえなかったのではあるまいか。また、愛するJクラブを持つサポーターの中には明日はわが身とばかりに戦々恐々としている人も少なくなかろう。
09年シーズン半ば、日本サッカー協会並びにJリーグは、国内移籍制度をFIFAルールに合わせることを発表した。これにより契約期間満了選手は移籍金なしで自由に他クラブへ移籍できるという国際ルールが国内間移籍でも適用されるようになった。
さて、移籍ルール変更後1年半が経ち2回目のシーズンオフを終えようとしているわけだが、その間、日本サッカー界にはどのような変化が生じてきたのであろうか。この項では、日本サッカー協会認定選手エージェントであり、森脇良太、森崎浩司、山崎雅人(すべて広島)、二川孝広、大塚翔平(ともにG大阪)、赤星貴文(ポゴン・シチェシン/ポーランド)ら12人のプロサッカー選手とエージェント契約を結んでいる松浦修也氏にご登場いただき、現状分析と解説をお願いすることとしよう。
エージェントをつける選手と0円移籍を狙うクラブが増えた
まず、移籍ルール変更後、選手側にはどのような変化が生じたのであろうか。「国内移籍がしやすくなったことで『ビッグクラブに行きたい』、『他クラブからの評価を知りたい』という選手側のニーズが強まり、エージェントをつける選手が増えてきました。もはやJ1のレギュラークラスでエージェントをつけていない選手は稀だと思います」
一方、クラブ側の動きとしては、エージェントに対しどの選手がいつ0円移籍になるのか探りを入れてくるようになったという。「Jクラブはエージェントとの情報交換のなかで、どの選手の契約がいつ切れるかという事をある程度把握していると思います。そんななかで移籍金のかからない選手を補強リストに挙げていくというのが、10年オフのスタンダードだったと思います」
実際、10年オフに実現した移籍の多くが0円移籍であり、移籍金が発生したのは本田拓也(清水→鹿島)や東慶悟(大分→大宮)の数ケースのみであった。