ランパードがランパードたる所以。プレミア史上最高のMF
フランク・ジェイムズ・ランパードの現役引退発表には、少々唐突な印象もあった。花道のクラブとなったニューヨーク・シティーFCが、契約期間満了をもってランパードの退団を公にしたのが、2016年11月14日。パトリック・ヴィエラ率いるニューヨークFCが、MLS東カンファランス準決勝でトロントに敗退して間もない頃のことである。
その時点で、オファーがいくつか舞い込んでいるとの話もあり、ランパード自身も現役続行の意思を漏らしていた。それからほんの2ヶ月も満たない、今年2月2日の「リタイア・アナウンス」――。これはあくまでも憶測だが、彼の心境の変化に少なからず影響を及ぼした要因に一つには、やはり“永遠のライバル”スティーヴン・ジェラードの「リヴァプールユース・コーチ就任」があったのではなかろうか。
実は人一倍負けん気の強いランパードのことである。そしておそらくは、「将来のイングランド代表監督への道へ一歩踏み出したジェラード」の“近況”を耳打ちした“アドヴァイザー”の存在、あるいは、早速に「ジェラードか、ランパードか」とささやき始めた英国メディアも、それなりの役割を果たした可能性は否めない。
なぜなら爾来、ウェスト・ハム、チェルシーの同輩たちはもちろん、その先達たちも含めて、英国フットボール界の誰に聞いても、フランク・ランパード・ジュニアこそが「プレミア史上最高のミッドフィールダー」だともてはやすからに他ならない。多分、彼自身もその辺りには自負もあろう。ならば、目指すはコーチングバッジ取得、それしかない。
確かに、ジェラードがリヴァプールにて果たした貢献度は抜きんでて、かつ、目立ち方が際立っている。何よりも、0-3から追いついて劇的なPK戦勝利に導いた2005年のチャンピオンズリーグ決勝のイメージはあまりにも鮮烈であり、それに比べて「チェルシーのランパード」は、少なくとも記憶を揺さぶるほどの“何か”と言えばすぐには思いつかないかもしれない。
しかし――そこが、それこそが、ランパードのランパードたる所以であり、押しも押されもせぬ絶対的司令塔にして切り込み隊長だったジェラードに対する、何をさせてもトップクラスの実績を残してきた究極のオールラウンダー、ランパードの価値なのである。実際、その足跡を振り返ると、まさに記録尽くしと言っても過言ではない。