「早く試合がしたいですね」(稲本潤一)
チームメイトの誰よりも日焼けした表情が、順調な調整ぶりを物語っている。常夏のハワイで自主トレを積み、満を持した状態で臨んだ沖縄・金武町での第1次キャンプ。右ひざ前十字じん帯断裂からの復活を期す、北海道コンサドーレ札幌のMF稲本潤一は「早く試合がしたいですね」と声を弾ませた。
「順調に回復していますし、開幕に間に合えば間に合わせたいと思っています。もちろん開幕に合わせて調整はしていくつもりですけど、それはメディカルと右ひざのコンディション次第となるので」
突然の悪夢に襲われたのは昨年6月4日。札幌ドームにジェフユナイテッド千葉を迎えた、J2第16節の前半14分だった。カウンターを仕掛けるMF町田也真人の左後方から、5試合ぶりに先発した稲本がトップスピードで追いつき、スライディングタックルを仕掛けた直後だった。
稲本らしいアグレッシブなプレーでボールを刈り獲ったものの、町田ともつれた際に右ひざが悲鳴をあげる。苦痛に顔をゆがめながら、担架に乗せられてピッチを後にした稲本に告げられたのは、全治までに8ヶ月を要する、つまりシーズン中の復帰がほぼ絶望となる大けがだった。
ジーコジャパンの一員として戦った2004年の6月にも、長期離脱を強いられる大けがを負っている。マンチェスターで行われたイングランド代表との国際親善試合。1‐1で迎えた後半アディショナルタイムにMFニッキー・バットと空中で競り合い、着地したときに左足を強打した。
そのまま福西崇史(当時ジュビロ磐田)と交代した稲本は精密検査の結果、左足首を骨折していることが判明。全治3ヶ月の重症で、アーセナルから期限付き移籍中だったフラムFCへの完全移籍の交渉が破談となる苦い思いも味わわされている。
「あのときよりも、すでに長く休んでいるのでね。その分、J1での戦いを楽しみたいと個人的には思っているし、もちろんチームに勝利をもたらすプレーやいい影響力を与えるプレーは、J1やJ2に関係なく、ピッチのうえでやっていけたらと思っています」
これを縁と呼ぶのかもしれない。くだんのイングランド戦の後半8分に、流れるようなパス回しから豪快な同点ゴールを決めているMF小野伸二(当時フェイエノールト)と、代表チーム以外で初めて同じユニフォームに袖を通して2017シーズンで3年目になる。